まさかの“阪神残留”発表で大山悠輔は「三浦大輔2世」になるか 巨人と阪神で4番を務めたレジェンドが「それでも“球団一筋”の選手は減る」と断言する理由
阪神の王貞治、巨人の掛布雅之
「巨人は大山選手に6年総額24億円を超える大型契約を提示したと報じられました。さらに山口寿一オーナーが選手の名前は伏せた上で、FAで獲得に乗り出した選手に『お声掛けした選手はぜひ来ていただきたい』と異例のラブコールを送ったのです。結果は阪神残留に決まったわけですが、この経緯だけでファンは驚いたに違いありません。大げさに言えば、王貞治さんが阪神に移籍するとか、掛布雅之さんが巨人にトレードされる、という話と同じだからです」 野球評論家の広澤克実氏は、巨人と阪神の4番を知る男だ。1985年にヤクルトに入団。90年代は“ヤクルト不動の4番”として活躍し、94年にFAを宣言すると巨人に移籍した。さらに99年のオフには阪神に移籍。広澤氏は両チームで4番を務めた経験を持ち、これは氏が“唯一”というプロ野球記録として残っている。 阪神の4番から巨人の4番に移籍せず、阪神残留を決めた大山を、巨人と阪神で4番を務めた広澤氏はどう見たのか、話を訊いた。 「大山くんの決断は、大山くん本人、阪神、そして巨人にとってもいい結果をもたらすと考えています。まず大山くんは阪神に残ることで将来、コーチや監督になる可能性が生まれました。さらに“阪神一筋”というイメージが定着するのは明らかで、これはファンの強い支持を得られます。ここで思い出すのがDeNAの三浦大輔監督です」
三浦監督と大山
DeNAを26年ぶりの日本一に導き、横浜を熱狂させた三浦監督は、幼い時は大阪市内で、小学校から高校までは奈良県で暮らした。意外なことに生粋の関西人なのだ。 「三浦監督は現役当時、ベイスターズの体質やチーム運営に批判的で、2008年に国内FA権を行使しました。三浦監督が関西に縁があり、阪神も歓迎していたことから、報道は阪神移籍を確実視していたのです。ところが三浦監督は残留を決め、ファンは非常に喜びました。今の三浦監督がDeNAを代表するOB・指導者であるのは言うまでもありません。それはFAで残留を決めたからです。同じことが大山くんにも起きる可能性があり、それは阪神にとっても良い効果をもたらすでしょう」(同・広澤氏) 大山と阪神にとって祝福すべきニュースであるのは分かる。だが広澤氏は巨人にもメリットがあると指摘する。なぜなのだろうか。 「巨人が大山くんの獲得に本腰を入れていたのは、もちろん巨人の4番である岡本和真くんがメジャーに挑戦するからです。ただ岡本くんは単年契約を結びましたから、少なくとも1年の猶予があります。今の巨人には岡本くんの後継者として4番を務められる可能性を持つ若手選手が少なくとも数人はいます。慌てて阪神の4番バッターを獲得するより、生え抜きを4番に育てるほうが巨人ファンも嬉しいでしょう。大山くんと縁がなかったことで育成に転じざるを得ず、それは巨人にとっても良かったはずです」(同・広澤氏)