アフリカの子どもたちに笑顔を!人力車で旅をするガンプ鈴木さんのアイデア「Run For Snack」
村でのハプニングは文化の違い?
水を汲み終わりシャワーの準備はできた。しかしその前に子どもたちにクッキーを配ることになり、集まる村人を前にガンプさんは話し始めた。日本のSNSフォロワーと一緒に走る企画を通して集まった参加費でクッキーを買っている、という話をしていた、そのときだ。 「Wait, No photo! No photo!(待て、撮影禁止、撮影禁止!)」 と叫ぶ男性がいた。話を聞くと、撮影もお菓子の配布も許可なしではだめだというのだ。 「いや、またきたか、と思いました」 ガンプさんたちは、その大きな声にうろたえるというよりも、これがどういう意味かがすぐにわかったと話す。結論からいえば、この男性は「ビールを奢ってくれたら、撮影とお菓子の配布の許可を出す」という物欲しさから起こした行動だったのだ。それでクッキー配布中に割り込んできた。この男性へはビールを買うことで一旦話は終わったようだったが…。 実はこの「なにかを引き換えに、なにかを許可する」という経験はこれが初めてではなかったとか。ガンプさん一行がケニアのナイロビ空港に到着したときだ。カメラ機材の持ち込みについて話を聞かれると、そのまま別室に連れて行かれた。そして空港職員にお金を払えば解放という、金銭の授受を経て入国したことがあったという。 ◆日本とは違うタンザニアの慣例 日本人にとって、アフリカでのこのような馴染みのない言動はとても戸惑う。そこでタンザニアに3年住んでいた友人にこの事実を伝えると、以下のような話が返ってきたという。 「タンザニアはもともと『お金のある者が、ない者(家族・親戚)を助ける』という文化が強いです。それ以外の関係でも『お金を貸してくれない?』は日常茶飯事で、私も何度もいわれたことがあります。お手伝いさん、警備員、学校の先生まで。警察など公的な立場でも金銭の要求はあるので、これは『ワイロ』と呼べるけれど、その他は『お金を工面し合う文化、習慣』といえるかもしれませんね」 ビールを渡した男性の件がひと段落し官、クッキーを持つガンプさんに村の子どもたちは群がった。そしてあっという間に足りなくなり、村の食品店に買いに行ったときだ。突然、警察官がガンプさんに近寄り話しかけてきた。 「名前は?なぜケニアからここにきたのか?この女性が、君が村にいることの説明をしてほしいといっている」 地元警察官から英語で質問され始めたガンプさん。村でリーダー格の女性が、ガンプさん一行の村滞在について、警察を通して尋ねてきたのだ。この女性に滞在する許可をもらわなければいけないということだ。このあと警察官との話し合いが2時間あまり続いたという。結果は? 「警察官は『水を1本くれ』といってきたんです。タンザニアではお金が欲しいという意味で、よくあるパターンらしいんですが。結局、水に5,000シリングをつけて渡したところ、警察官は笑顔になってグータッチ(苦笑)、そして解決です」 ガンプさんは感情を抑えながら、現地での出来事を淡々と話してくれたが、このような「アフリカの習慣」なるものが連続してあることをどう感じたのだろう? 「もちろん理不尽な話だと思います。でも結局、お金を持っている外国人だと思われて、そうなるようです。気持ちも状況もこれ以上面倒なことになりたくないので、安く済むようにします。この村で払ったのは日本円で300円くらいです。これがリアルですね」 ◆ハプニングを乗り越え、ようやくかなった民泊と現地の人との交流 「民泊で現地の人と交流したい」という思いの一方で、現地の人と関われば関わるほど、ハプニングがおこる。それがアフリカを走るということなのか、ガンプさんはまだ解せない表情だ。 ワイロとは日本では一般的に「袖の下」というイメージがあるが、アフリカでは堂々としている。ガンプさんも友人も「習慣に近いこと」と口を揃えていう。日本の文化には無いことがアフリカでは日常だということとして、話を留めた。ガンプさんたちは、ただ「アフリカの習慣」に応じたのだ。 すべてが終わり、夕飯が始まる。宿泊させてくれる女性はレストランを営んでいるので、感謝の気持ちを込めて、みんなでたくさん食べて、ビールも飲んだ。女性とも村の出来事をシェアし、村の人間模様をゆっくり話せたという。 この夜、提供してくれた家の中には全員が寝るスペースはないので、ガンプさんやカメラマンたち5人は車やテントに分かれて就寝した。