70歳の元商社マンで年金月額23万円、預貯金5000万円で不動産もあるのに…バラ色の老後のはずが、夫婦を待ち受けていた驚きの結末
中堅商社に勤め、年金は投資や節税もきちんと行っていたため資産は十分、ローンも完済しているAさん夫婦。悠々自適の老後かと思っていましたが、思わぬ落とし穴がありました。その落とし穴とは──。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ”
不安のない老後を過ごせると思っていた
70歳の夫Aさんは、65歳で仕事を完全に辞めてから、67歳の妻Bさんと悠々自適の老後を過ごしていました。 現役の頃、中堅商社に勤めていたAさんは、老後のために毎月コツコツと投資信託の積立投資をしていました。さらに昇進とともに収入が増え、給料から引かれる税金が増えていたAさんは、不動産投資を実践することで上手く節税をしながら資産を築いてきました。自宅も収益物件もローンは完済しており、毎月まとまった家賃収入と投資信託の分配金があるのでお金の心配はありません。 3人の子供たちも成人しており、それぞれに家庭を築いて手を離れています。お正月に家族が集まると20名近くになり、賑やかに過ごしています。子育ては大変でしたが、今では良い思い出となっています。 専業主婦のBさんは普段の生活費は管理していますが、投資信託や収益物件などについての知識はなく、全て夫のAさんに任せています。毎年、海外旅行と趣味の茶道や花道など娯楽の費用はAさんに払ってもらっています。また自動車も3年おきに最新の車種へ乗り換えています。これから先も資産の心配もなく、趣味三昧の日々を過ごせると思っていました。しかし──。 ある時からAさんの言動に違和感を覚えるようになったBさん。食事をした後にすぐ「食事はまだか?」と聞いてきたり、「眼鏡を知らないか?」「財布が盗まれた!」と家の中を探し回ったりすることが増えてきました。 さすがに心配になり、夫婦で病院を受診しました。医師による診断の結果は「アルツハイマー型認知症」でした。 アルツハイマー型認知症は、認知症のなかで最も多い類型で、脳の神経細胞が破壊され、脳が萎縮することで発症します。アルツハイマー型認知症の症状は、初期段階では物忘れなどから始まり、時間の経過とともに症状が悪化していきます。 残念ながらアルツハイマー型認知症を根本的に治す治療法は今のところありません。 【アルツハイマー型認知症の主な症状】 「日付や曜日がわからなくなる」 「判断力・理解力の低下」 「同じ内容の話や質問を繰り返す」 「財布や鍵を置いた場所を思い出すことができない」 「季節に合った服装を選ぶことができなくなる」 「通い慣れた場所で道に迷う」 認知症の発覚後のある日、Aさんの口座から習い事の費用を出金しようと、Bさんは銀行へ行きました。窓口でBさんが「夫が認知症になってしまい、私が夫の口座からお金を引き出したいので手続きをお願いします」と行員に伝えると、「申し訳ございません。ご本人様に手続きをしていただく必要があります。認知症になられたのであれば成年後見制度をご利用ください。後見人がつかないとご主人の預金を引き出すことはできません。」と言われてしまいました。 自分の年金以外は全てAさんが管理しており、不動産や投資信託も全ての資産が夫名義のため、Bさんは慌てて手続きを行いました。 成年後見人は家庭裁判所によって弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家が選任されます。後見人が決まったことにより、Aさんの預貯金を引き出すことができるようになりましたが…。 Bさんは、今までのように夫のお金を自由に使えなくなってしまいました。成年後見制度は本人の財産を守るための制度であり、日々の生活に必要な生活費は後見人を通じて出金してもらうことができました。 しかし、奥さんの旅行や趣味の費用について、これまで通り夫のお金で賄ってもらうことはできず、奥さんからすると「後見人がついても自由にお金が使えない」状況でした。 さらにつづきとなる記事<年金「月額23万円」預貯金「5000万円」で、さらに不動産もあるのに…67歳の妻が「お金に不自由」するようになってしまった「意外なワケ」>では、その後のBさんの顛末と、こうした事態に陥らないための対策について解説します。
武田 拓也