FC東京ルヴァン杯Vの裏に長谷川監督が掲げた4箇条の規律
もっとも、雨降って地固まる、と言うべきか。東が離脱した穴を埋めたルーキーの安部柊斗(明治大卒)は群を抜く運動量の多さで必要不可欠な存在となり、右ひざ前十字じん帯と外側半月板を損傷した守護神・林彰洋の代役をアカデミー出身の22歳、身長198cmの波多野豪が懸命に演じた。 故障者だけではない。2年前のMF久保建英(ビジャレアル)に続いて、昨夏にもアンカーの橋本拳人(ロストフ)、右サイドバックの室屋成(ハノーファー96)と日本代表組が海外へ旅立った。新天地での活躍へエールを送る一方で、新型コロナウイルス禍における減収の影響で補強もままならない。 それでも、長谷川監督はファイティングポーズを絶対に失わなかった。柏との決勝戦の先発メンバーで言えば、アンカーに前述通りに森重が入り、インサイドハーフを東と安部が、右サイドバックをルーキーの中村帆高(明治大卒)が、3トップの一角を21歳の原大智が担った。 特に森重に関しては中東カタールで集中開催された、ACLの戦いを見越したシーズン途中のコンバートだった。リーグ戦で得点王とMVPをダブル受賞したFWオルンガへ、何度もラストパスを供給してきたトップ下の江坂任とのホットラインをほぼ完璧に寸断した森重の存在は、安部や波多野、中村ら若手選手の成長と合わせて、長谷川監督が要求してきた『優勝へのマルキュウ』に他ならない。 勝負どころだと感じ取り、柏より先に動く形で投入した切り札のアダイウトンが7分後に決勝点をゲット。就任3シーズン目のラストゲームでFC東京での初タイトルを手にした指揮官は、最初にルヴァンカップの前身となるヤマザキナビスコカップを制し、史上2クラブ目の三冠独占へ繋げた2014シーズンを思い出しながら、「やはり縁があると感じています」と言い、こう続けた。 「タイトルを取らないとタイトルは集まってこない。取るまでが非常に大変だが、一回取ることで他のタイトルが近づく。まずはひとつ、何でもいいから三大タイトルのひとつを取りたかった」 初めてタイトルを手にした瞬間から、もう次がほしくなるのはすべての選手に共通する思いだ。涙をこらえながら「まだまだ。これから強い東京をスタートできるように」と来シーズンをみすえた東も例外ではない。4年目の指揮が決まっている、東をして「怖いですけど、すごく愛があることは全員がわかっている」と言わしめる長谷川監督のもとで、FC東京が新たなステージへ繋がる扉を開けた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)