FC東京ルヴァン杯Vの裏に長谷川監督が掲げた4箇条の規律
ガンバ大阪を2017シーズン限りで退団していた長谷川監督へオファーを出した、筑波大学蹴球部時代のひとつ後輩だったFC東京の大金直樹代表取締役社長は、日本代表に選出される選手を何人も擁しながら、なかなかタイトルに手が届かないチームにもどかしさを感じていた。 「FC東京は『甘い』あるいは『緩い』という言葉で表現される」 チームに巣食うぬるま湯的な体質を根本から変えてほしいという思いを託して、厳しくも愛情あふれる指導を介してガンバ時代の2014シーズンに国内三大タイトルをすべて制覇し、翌シーズンにも天皇杯を連覇した先輩に白羽の矢を立てた。そして、長谷川監督の目にもFC東京の甘さが映った。 「選手同士がいい意味ですごく仲がいい。ただ、チーム内における厳しさという点でどうなのか。才能がある選手が多いのになかなか開花しきれないのは、居心地のいいチームだからなのか、と」 1年目をJ1リーグ戦6位、ルヴァンカップ・グループステージ敗退、天皇杯ベスト16で終えた長谷川監督はさらなる改革に動く。イズムをさらに浸透させるために、大宮アルディージャから加入して7年目を迎えていた、攻守両面で誰よりも献身的にプレーする東に新キャプテンを託した。 長くクラブの顔を務め、2018シーズン限りで引退した梶山陽平の象徴だった「10番」を直前に継承していた東もまた、FC東京を優勝させるために来たと公言しながら、確固たる結果を残せない日々が続いていたなかで「チームとしても、個人としても強くなりたい」と渇望していた一人だった。 「普段の練習から僕がヘラヘラするとか、手を抜いていたらみんなに伝染すると思っている。多少はきついと感じるときもありますけど、常に見られているという意識と責任が力をみなぎらせてくれるというか、やらなきゃいけないという思いにさせてくれる」 キャプテンを拝命した後に生じた自身の精神的な変化を、表情を引き締めながら語ったことがある東は、こんな言葉をつけ加えることも忘れなかった。 「健太さん(長谷川監督)に優勝カップをプレゼントしたい」 昨シーズンは終盤戦までJ1リーグの首位をキープしながらも、怒涛の追い上げを演じた横浜F・マリノスに、敵地・日産スタジアムでの直接対決となった最終節での戴冠を許した。冒頭で東が振り返った「去年苦しい思いをして、悔しい思いをして――」はまさにこの光景を指す。 捲土重来を期した今シーズンも、東は開幕直前に左目を痛めて出遅れ、7月の再開後には右足第5中足骨を骨折して長期離脱を余儀なくされた。復帰を果たしたのは11月18日。日々の練習で背中を見せられなかったもどかしさと、決勝が延期されたことで先発として国立競技場のピッチに立ち、優勝カップを長谷川監督へ捧げられる嬉しさとが相まって、図らずも涙腺を決壊させたのだろう。