農薬開発の環境安全性は、メダカと藻類と外来ミジンコで測られている
では、農薬なんて使うのを止めればいい。それは至極当然の正論です。日本人もみんなが田んぼや畑に出て、農業に専念すれば、農薬に頼る必要は、きっと大きく減ることでしょう。でも、今の日本では農業や林業、水産業など、第一次産業と呼ばれる職業に就く人は大きく減っています。代わりに工業が発展し、さらに近年では金融関連産業でこの国は世界屈指の経済大国となり、わざわざ自分で作らなくてもお金さえ払えば、調理済みの食べ物を口にすることができるようになりました。 一方で日本人は自分たちが食べる食品の生産という面に随分と無頓着になってしまいました。自分が食べている食品がどこでどうやってつくられているのかも知らぬまま口にする。都会に住んでいたのでは土にも触らないし、ましてや田植えなんてしたこともない。農業の苦労なんて体験したこともなければ、したいとも思わない。自分のやりたくない農作業をごく少数の農家さんたちに押し付けておいて、あるいは海外の農業に任せておいて、農薬と聞いただけでアレルギー反応を示す。これは文字通り、ちょっと「虫がいい」話かもしれません。 蛇足になりますが、日本に生息しているミジンコも、実は起源がアメリカの外来種だったらしいことがDNAの分析で判明したという研究結果が昨年発表されました。ただし、その侵入年代は700~3000年前とされ、日本がアメリカ大陸と交流する遥か以前の時代であり、その移送ルートは謎とされます。 【連載】終わりなき外来種の侵入との闘い(国立研究開発法人国立環境研究所・侵入生物研究チーム 五箇公一)