農薬開発の環境安全性は、メダカと藻類と外来ミジンコで測られている
OECDが定めている農薬の生態リスク評価の基準
その会議とはOECD、日本語で経済開発協力機構とよばれる国際組織で開催されるものです。この組織は、ヨーロッパ、北米、日本等の経済先進国で構成されており、世界の経済成長や貿易について協議する場となっています。実は、農薬を含む合成化学物質の国際的な流通についても、この機関で話し合われています。自由貿易主義のもと、化学物質製品のスムースな取引を確保するために、その安全性評価の方法に世界共通の基準を設けることがこの機関の目標の一つとなっています。 その理由は、世界の国々が、それぞれにバラバラの方法で毒性試験をして、独自の基準で化学物質の安全性評価をしてしまうと、ほかの国に化学物質を売ろうとしても、安全性の基準が違うことを理由に、試験のやり直しが求められたり、輸入が止められたりして、自由な貿易ができなくなってしまうからです。試験方法と安全性評価の基準を統一しておけば、どの国で試験しても、安全性データをそのまま流用することができるので、化学物質の輸出入がスムースにすすめられます。 農薬の生態リスク評価に関する、OECDの基準というのが、藻類、ミジンコ、メダカに対する農薬の毒性データとなります。この3種に対して影響が小さい薬であれば、環境中に流出しても、ほかの生物たちに対して安全性が高い薬とみなしていいであろう、というのがOECDで決められている「理屈」となります。 なぜ、この3種がOECDに選ばれたのか? まず、藻類=植物プランクトンは生態系の中の生産者である植物の代表として選ばれ、ミジンコは藻類を食べるので、草食動物の代表として選ばれ、メダカはミジンコを食べるので肉食動物の代表として選ばれています。つまり生態系における食物連鎖を「再現」する試験生物としてこの3種が認定されているのです。なおかつ飼育がしやすく、場所もとらない、ということからも試験生物として最適とされます。というわけで、この3種が「スタンダード生物」として世界中で農薬の安全性試験に利用されるようになっています。