なぜ森保Jはグループ最下位のベトナムに勝てなかったのか…W杯“本番”に向けて浮き彫りになった課題と不安
実に61年ぶりに引き分け以下に終わり、一部メディアでは「歴史的ドロー」と揶揄されたベトナムとの国際Aマッチを、森保監督は努めてポジティブに総括した。 しかし、埼玉スタジアムのピッチに刻まれた不安はまだある。 例えばセットプレー。最終予選を通じてコーナーキックやフリーキックからゴールが生まれず、今年に入ってからはセットプレー専任コーチを入閣させながら依然として結果を出せていない。逆にベトナムが獲得した左コーナーキックで、日本のマークを外すためにデザインされた形から狙い通りのゴールを決められて先制された。 森保監督の采配そのものに対する疑問も再び露呈した。 A代表と東京五輪代表で指揮を執った78試合から、0-0だった3試合を除いたなかで先制すれば46勝6分けと無敗を継続している森保監督だが、逆に先制されれば2勝2分け19敗と大きく負け越している。最後に逆転勝ちを収めたウズベキスタン代表とのアジアカップのグループステージから、実に3年2ヵ月もの歳月がすぎている。 先制された試合における連敗こそ、ベトナム戦で「13」で止めた。しかし、極端すぎる試合結果には、キックオフ前の準備こそ周到に積めるものの、不測の事態に対して采配で試合の流れを変えられない森保監督の現在地が反映されている。 ベトナム戦でも交代枠をひとつ残したまま、ベンチにオーストラリア戦で先発したFW浅野拓磨(27、ボーフム)や、追加で初招集されながら出番がなかったFW林大地(24、シントトロイデン)がスタンバイした状態で試合終了を迎えた。 「選手たちにあらためて競争を煽るつもりはないが、競争は当たり前の世界だと思っているので、まずは所属チームを勝たせる存在であってほしい」 ベトナム戦を終えて解散するチームへ、そして3月シリーズでは選外となった代表候補の選手たちへ檄を飛ばした森保監督は、その上で237日後の11月21日に開幕するカタールワールドカップへ向けたチーム作りの青写真を明かしている。 「まずは誰が出ても、チーム全体として相手に隙を突かれないように、我々がやろうとする戦い方をよりスムーズに発揮できるように選手層の幅を広げていかないといけない。次の6月の親善試合でもう1度、選手層の底上げを図っていきたい」 固定されたメンバーである程度の力を発揮できることは、出場権獲得までのアジア最終予選で証明された。しかし、本大会までに必ず研究される宿命にある状況を考えれば、戦い方の幅を大きく広げていかなければ、とてもじゃないが太刀打ちできない。 貴重な実戦の舞台でもあったベトナム戦を、森保監督は「消化試合にはしない」と位置づけていた。しかし、戦いを終えたピッチに残ったのは、再び頭をもたげてきた指揮官の采配に対する不安と、埼玉スタジアムに駆けつけた4万4600人のファン・サポーターの間で共有された、ドローにもたらされる“消化不良”の思いだった。 (文責・藤江直人/スポーツライター)