園子温監督の映画人生 心筋梗塞からハリウッドデビューへ
ニコラス・ケイジが園さんを心配しロケ地変更
そして4年ほど前、脳梗塞で倒れる前のことだが記念すべきハリウッドデビュー作となる「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」の台本がアメリカから届いたのだとか。 「僕としては15年前からデビューしたかったんで台本読む前からOKしようという気持ちでした。それで、デビュー作はこれにしようと即決しました。野球やサッカーでもみんなメジャーとか海外のリーグに行きたいと思いますよね。それと同じ感覚だと思うんです」 同作は架空の未来都市サムライタウンを舞台に悪名高き銀行強盗のヒーロー(ニコラス・ケイジ)が、街を支配するガバナー(ビル・ モーズリー)から逃げ出した女バーニス(ソフィア・ブテラ)を連れ戻すべく制限時間を超えると爆発するスーツを着させられ、ゴーストランドまでバーニスを追うというもの。作品はすでに完成し10月8日の公開を待つばかりとなっている。主演のニコラス・ケイジとは東京で会ったという。 「アメリカのプロデューサーがニコラスを推薦してきて本人と東京で会ったのですが、そのとき彼が僕の『アンチポルノ』という地味な映画が大好きで号泣したというから、変わったやつだ面白いなと思って。僕はマカロニウェスタン(イタリア製の西部劇)の雰囲気でやりたい、セルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』という作品におけるチャールズ・ブロンソンみたいにしたいと言ったら、ニコラスも『まさにそれだと思う。おれはこの映画でブロンソンやりたい』と意気投合したんです」 当初はメキシコ辺りの砂漠地帯でロケをする予定だったという。しかし思わぬ事態が園さんを襲う。2019年2月、自宅で倒れて緊急搬送されてしまったのだ。 「心筋梗塞で一回霊界に行って戻ってきたんですけど、そのときニコラスに『メキシコはやめて日本で撮ろう。お前の体が心配だ』と言われて、それで急きょ日本ロケになったんです。ずっとハリウッドを目指してきたので僕としては抵抗がありました。日本で撮るならまるで日本映画じゃないかと。でも冷静に考えたらこれはアメリカ映画で海外の人たちが多数観るので日本を舞台にしたほうがファンタスティックで面白くなるのかな、と。だから最初からオリエンタルなヴィジュアルを意識していたわけではなく心筋梗塞が原因です。あれがなかったら今頃メキシコを舞台に撮っています」