「どうせ年金はもらえない」年金不信はいつどこから生まれた!? 専門家の見解
子どもと親は「異なる日本を生きている」
大妻女子大学短期大学部の教授として、日頃から学生と接する立場でもある。年金に漠然とした不安を抱える若い世代に知ってもらいたいことはなんだろうか。 「まずは、自分たち10代や20代と親世代とでは、異なる日本を生きているという認識を持ってもらいたいと思っています。経済の観点ではここ数年で社会がよい方向に変わってきています。コロナが明けてようやく賃上げが起こり始め、女性や高齢者の就業者数も、今から20年前の2004年時点での予測を1000万人以上も上回っている結果が出ました」 働き手が増えた理由には、働きたくても働けなかった人が減ったという側面だけでなく、「生活のため」「老後も含めた将来のため」など経済的な不安からくる側面もあるが、社会の支え手が増えたことで、少子高齢化で懸念されていた年金財政も改善されつつある。 2004年の年金制度改正により導入された、給付額を少子高齢化などの社会情勢に応じて抑制する「マクロ経済スライド」という仕組みも約30年後には終了し、それ以降は物価にフルで連動した年金額が給付される見通しだ。 「経済も社会の価値観も、2、30年前とはまるで違います。今の50代と20代は同じ日本に生きていても、まったく異なることを経験している。日本がふたつあると言ってもいいくらいです。だからこそ若い人たちには、上の世代から聞いたことを鵜呑みにせずに、その時代の現象であったことを認識してもらいたいと思っています」
取材・文:小山内彩希 編集:大川卓也