なぜイタリアはイングランドをPK戦で破り53年ぶりにEUROを制覇できたのか…「いくつもの魔法があった」
勝利の女神がせわしく行き来する。緊張と興奮が激しく交錯し、天国と地獄に通じる扉がイタリア、イングランド両国の前に何度も開いては閉じる壮絶なPK戦。最後に雄叫びをあげたのは前者の守護神、ジャンルイジ・ドンナルンマ(ACミラン)だった。 約6万5000人の大観衆を飲み込んだ聖地、ロンドンのウェンブリースタジアムで日本時間12日未明にキックオフされたヨーロッパ選手権(ユーロ2020)決勝。1-1のまま15分ハーフの延長戦でも決着がつかず、PK戦にもつれ込んだ死闘を3-2で制したイタリアが、母国で開催された1968年大会以来、53年ぶりにヨーロッパの頂点に立った。 イタリアの先蹴りで始まった運命のPK戦。イタリアの2人目、FWアンドレア・ベロッティ(トリノ)のPKがイングランドの守護神、ジョーダン・ピックフォード(エバートン)に阻止された嫌な流れは、イングランドの3人目以降で好転する。 FWマーカス・ラッシュフォード(マンチェスタ-・ユナイテッド)の一撃は左ポストに嫌われ、4人目のMFジェイドン・サンチョ(ボルシア・ドルトムント)の右へのそれは、コースを完全に読み切ったドンナルンマに弾き返された。 決めれば優勝となるイタリアの5人目、MFジョルジーニョ(チェルシー)のPKを再びピックフォードが右手で触れ、左ポストに当たってはね返ってきたボールをキャッチ。しかし、一度手にした流れをイタリアは手放さなかった。 イングランドの5人目、MFブカヨ・サカ(アーセナル)が右へ放った一撃をドンナルンマが両手で再び阻止。大会MVPとなるプレーヤー・オブ・ザ・トーナメントに輝いた、22歳の若き守護神は「僕たちは特別なことを達成した」と胸を張った。 「いきなり失点してしまったが、僕たちは決してあきらめるチームではない。その後のゲームの大部分を支配した僕たちは素晴らしいチームであり、勝者に値すると思う」 ドンナルンマの言葉通りに大一番はいきなり動いた。開始わずか2分。イタリアのコーナーキックを防いだイングランドがカウンターを発動させる。中央でボールを受けたFWハリー・ケイン(トッテナム・ホットスパー)が右へ大きく展開する。