なぜイタリアはイングランドをPK戦で破り53年ぶりにEUROを制覇できたのか…「いくつもの魔法があった」
ボヌッチはPK戦でも3番手を担い、ゴールの背後から大勢のイングランドサポーターがブーイングを浴びせる状況で冷静沈着に成功させている。対照的にイングランドのラッシュフォードとサンチョはPK戦に備える形で、延長後半の終了直前に投入されていた。 前者は23歳で後者は21歳。才能ある若手といっても優勝か否かが決まる大一番で、明らかに流れに入っていけなかった。後半途中から投入されていた19歳のサカも然り。若手を信頼してPK戦へ送り出したサウスゲート監督は、試合後に静かに語った。 「結果には失望しているが、選手たちは全力を尽くしてくれた。トレーニングに基づいてPK戦の順番を決めた。それは私の判断であり、責任はすべて私にかかってくる」 イタリアが歓喜に浸ったヨーロッパ時間11日は、1982年のスペインワールドカップでイタリアが低かった下馬評を覆し、3度目の頂点に立った記念日でもある。そして、当時のメンバーたちはイングランドとの決勝前にレターを公開し、ワールドカップ予選敗退から雄々しい復活を遂げてきたマンチーニ監督と選手たちに感謝の思いを届けている。 「たとえ決勝がどのような結果になろうとも、美しい物語は決して終わらない」 あえて物語の前に「美しい」と添えたのは、マンチーニ監督のもとで「カテナチオ」と呼ばれる伝統の堅守に、自分たちでボールを保持する攻撃的なスタイルを融合させた、新しいアズーリが生まれつつある挑戦を心から歓迎していたからだ。 マンチーニ監督に率いられるイタリアが、最後に負けたのは2018年9月のポルトガル代表とのUEFAネーションズリーグ。母国の記録をすでに更新している連続無敗記録は、公式記録上では引き分けとなるイングランド戦で「34」に伸びた。 イングランド戦を翌日に控えた会見で「特別な日になることを望む」と話していたマンチーニ監督は、ピッチ上でひっそりと涙をぬぐっている。生まれ変わりながら新たな歴史を刻むアズーリはヨーロッパ制覇を通過点として、ブルガリア、スイス両代表と対戦する9月のワールドカップ予選で、カタールの地に近づく白星を貪欲に追い求めていく。