なぜイタリアはイングランドをPK戦で破り53年ぶりにEUROを制覇できたのか…「いくつもの魔法があった」
攻め上がってきた右ウイングバック、キーラン・トリッピアー(アトレティコ・マドリード)が放ったのはファーサイドへのハイクロス。これを走り込んできた左ウイングバック、ルーク・ショー(マンチェスター・ユナイテッド)が豪快に蹴り込んだ。 今日12日に26歳になるショーにとって、これが嬉しい代表初ゴール。キックオフ前の予想を覆し、3バックで臨んできたガレス・サウスゲート監督の布陣が奏功する形で、悲願の初優勝を狙うイングランドが電光石火の先制弾を奪った。 しかし、イタリアは決して下を向かなかった。試合後にドンナルンマは笑顔を浮かべながら尋ねた。「みなさん、僕たちがどこから挑戦を始めたか知っていますか」と。 2017年11月13日に味わわされた衝撃は、いまでもイタリアサッカー史の屈辱として刻み込まれている。ロシアワールドカップ出場をかけたスウェーデン代表とのプレーオフ第2戦。敵地での初戦を0-1で落としていたイタリアはホームでまさかのスコアレスドローに終わり、ワールドカップの連続大会出場が「14」で途切れた。 GKジャンルイジ・ブッフォン、MFダニエレ・デ・ロッシら一時代を築いたレジェンドたちが再起を託してアズーリに別れを告げる。ラツィオやインテル、マンチェスター・シティなどで指揮官を歴任したロベルト・マンチーニ監督のもとで歩んできた、復活への道の険しさに比べれば開始早々の先制点はさほどショックではなかった。 「夢がかなった。信じられない思いでいっぱいだ。僕たちがこの挑戦を始めたときから、いくつもの魔法を感じてきた。それはみんなが日に日に成長することだ。僕自身はファビオ・カンナバーロが2006年のワールドカップを掲げている姿をいつも心のなかで思い描いてきたが、それが今夜、僕たちに最後の最後で幸運をもたらしてくれたと思う」 キャプテンとして歓喜の涙をにじませながら、勝者に贈られるアンリ・ドロネーカップを掲げたDFジョルジョ・キエッリーニ(ユベントス)が感慨深げに語った。まもなく37歳になるキエッリーニも、後半22分に同点ゴールを決めた34歳のDFレオナルド・ボヌッチ(ユベントス)も、ともに4年前のスウェーデン戦にフル出場していた。 今大会の準決勝までの6試合で1失点だったイングランドの堅守をこじ開けた一撃も、右コーナーキックからのこぼれ球を、ファーサイドでキエッリーニが潰れた直後にMFマルコ・ベラッティ(パリ・サンジェルマン)がヘディングシュート。これはピックフォードが阻止したが、左ポストに当たったこぼれ球をボヌッチが執念で押し込んだ。