「空のFI」日本人パイロット室屋義秀が44歳で挑む壮大な野望!
室屋が活動拠点としている福島県のふくしまスカイパークには、今年展示場となる新しいハンガーが完成する予定だが、さらにここをベースに「国産レース機の製造に乗り出したい」という壮大なプランを抱く。 「MRJ(三菱重工業が開発中の国産小型旅客機)のような規模ではないが、夢と希望のある未来を作るプロジェクト。勝てるレース機を作るためのデータは蓄積してあるし、アイデアもたまっている。開発が始まって3年あれば、飛ばすことができる」 なぜ、その夢を? 「日本人として国産機で勝てたとすれば、面白い国家プロジェクトになるじゃないですか。飛行機の開発は歴史的に戦後で止まり、技術者の多くは自動車産業に流れて世界トップの自動車を作った。日本人の力を結集すれば、品質も含めていいものが作れるはずだし、僕自身にまた違う世界が開ける気がするんです」 だが、国産のレース機を開発するとなると研究費などを含めると「10億円は必要」(室屋)のビッグプロジェクト。つまりお金を含めた支援母体が必要になるが「共感する人が出てくれるはず」と、室屋はポジティブだ。「操縦技術の世界一」を志し、アルバイトでお金を貯め、借金をして機体を買い、ギリギリの生活から逆境の人生を跳ね返して、やっと世界のトップグループにまで上りつめた室屋ならば、不可能の3文字はないのかもしれない。 また室屋は、2015年から「キッズプロジェクト」という子供たちを対象に体感型の航空教室をスタートしているが、さらにパイロットだけでなく、エンジニアも含めた航空産業に従事する後継者を育成するための教育機関が作れないかと、工業高校や専門学校へ働きかけているという。 「能力のある人間を育成しないと航空産業が発展しません」 日本の航空産業、宇宙産業の発展へ寄与したいとのビジョンがある。 今日27日に44歳となる室屋の夢構想は尽きない。 この日のキックオフミーティングには多くのメディアが殺到した。 何かに突き動かされるかのようにエネルギッシュに前へ前へと進み始めた“侍パイロット”は、それでも「僕自身は何も変わらないんです。知り合いは増えましたが」と、ニヒルに笑った。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)