契約終了のための交渉期間は約3カ月。ペレス側の要求に従いレッドブルは莫大な違約金を負担、ホーナーは難しい立場に
レッドブルは、セルジオ・ペレスの離脱を発表する際にも、過去3カ月にわたって両者が繰り広げてきた茶番劇のシナリオに沿った声明を用意したが、F1の内情をよく知る人々はだまされることはなかった。この決別は、9月のシンガポールGP以来、既定路線だったのだ。 【写真】セルジオ・ペレス(レッドブル)とリアム・ローソン(RB)のバトル シンガポールの前のアゼルバイジャンでは、ペレスは先頭集団で戦う力があることを示し、シーズン初めて予選でマックス・フェルスタッペンを上回り、カルロス・サインツとの終盤のアクシデントまで2位争いに加わっていた。シンガポールGP後にダニエル・リカルドがRBから放出されることになり、ペレスはバクーで見せたパフォーマンスを維持できる限り、そのポジションは安泰のように見えた。 しかしマリーナベイ・サーキットで、ペレスは再び低調なパフォーマンスに戻り、予選ではフェルスタッペンがフロントロウを獲得したのに対し、ペレスはQ2でチームメイトより約0.9秒遅いタイムにとどまり、敗退した。 それ以降、ペレスはトップ集団で走るよりも、ジュニアチームのリアム・ローソンや角田裕毅とポジション争いをすることが多くなった。ローソンのパフォーマンスは人々を驚かせるほどのものではなかったが、ペレスがレッドブル・レーシングでのキャリアを終えつつあることは明らかだった。 その後、彼らは、表面上では事実に即さないショーのようなものを見せ続け、チームもドライバーも、あと2シーズン分の契約があると主張し続けた。しかしその裏で、その契約を双方が受け入れられる形で解消するための条件を模索していた。 ペレスを支えるベテランマネージャー、ジュリアン・ジャコビがアブダビGPの週末を通して姿を見せていたことから、交渉が最終段階であることが分かった。ジャコビは重要な会議に出席する必要がない限り、ホスピタリティ施設に来て時間を過ごすのは無駄だと考える人物だからだ。 ペレスが要求していた補償パッケージは非常に高額だった。レースに出るわけでもない人間に2年分のサラリーを支払うことを、クリスチャン・ホーナーは当初は受け入れたがらなかったが、メキシコの情報筋によれば、ペレスとジャコビは、望むものほぼすべてを手に入れたうえで、契約解消への合意書にサインをしたようだ。 ペレスを外すために多額の金を支払う羽目になったのは、ペレスとの契約を2024年シーズンの非常に早い段階で2年延長したからだった。そうした理由を、ホーナーは、レッドブル社のボスたちに説明しなければならないだろう。 その契約が合意された時期には、たとえばカルロス・サインツ、バルテリ・ボッタス、エステバン・オコンがマーケットに出ていた。さらにアレクサンダー・アルボンを、ウイリアムズからレッドブルに復帰させることも可能だった。 ディートリッヒ・マテシッツの時代とは異なり、マーク・マテシッツとオリバー・ミンツラフが相手では、なぜこれほど多くの資金を無駄に使わなければならなかったのかを納得させるのは、いくら口達者なホーナーであっても、簡単なことではないだろう。 [オートスポーツweb 2024年12月22日]