ビタミンD、亜鉛、カルシウム…。不足しがちな重要栄養素は魚に頼るべき理由(専門家が監修)
魚介類可食部(生)のビタミン含量(㎍/100g)
成人男女のビタミンD摂取目安量は8.5㎍、耐容上限量は100㎍。あん肝ならごく少量、イワシなら1尾でカバーできる。
全体食でカルシウムを効率的に補給
魚食ではできても肉食では絶対にできない食べ方、それはホールフード=全体食。シラス、シシャモ、アユ、イワナ、コアジの南蛮漬け、ワカサギの天ぷらなどなど。これらは頭から尻尾まで丸ごと一尾の命をいただく全体食。牛・豚・鶏ではまず無理な食べ方だ。その最大のメリットはさまざまな成分を一度に摂取できるということ。 「魚の脂質に含まれているビタミンAやビタミンD、そしてカルシウムを摂取できるということが大きなメリットです。たとえばアユは生の可食部ではカルシウムが100g中270mgですが、焼いて丸ごと食べると480mg摂ることができます。しかもビタミンDの働きでカルシウムの吸収はさらに促されます」 この他、小魚の佃煮など常備菜を日常的に口にするなど、全体食のメリットを十二分に生かしたい。
魚介類可食部(生)のミネラル含量(mg/100g)
カルシウム含有量はドジョウが断然トップ。どじょう鍋では骨を抜いた「ぬき」ではなく、丸ごと煮た「まる」でいただこう。
鉄と亜鉛は魚介類からいただく
カルシウム同様、日本人に不足しがちなミネラルが鉄。ホウレンソウなどの野菜に含まれる鉄に比べて、吸収率が高いのが肉や魚に含まれる鉄。前者を非ヘム鉄、後者をヘム鉄という。酸素を細胞に運び、貧血を予防するためには、後者のヘム鉄を効率的に補給することが重要。有効な補給源がアサリや赤貝などの貝類。 「また、遺伝子の合成や皮膚の健康維持、味覚障害を防ぐために摂取した方がいいミネラルが亜鉛です。最近では亜鉛が含まれていないインスタント食品の摂取によって亜鉛不足が増えているともいわれています。亜鉛は魚の内臓に豊富ですが、エビやカニなどの甲殻類やイカやタコなどの軟体類にも豊富。内臓が苦手な人はこうした魚介類を口にすることもおすすめです」 寿司店ではトロだけでなく魚介類にも手を伸ばすべし。
取材・文/石飛カノ(初出『Tarzan』No.873・2024年2月8日発売)