なぜ豪移籍の本田圭佑は現役のまま前代未聞のカンボジア代表監督をやるのか
前例のない決断が、世界のサッカー界を仰天させた。西野ジャパンの一員として先のワールドカップ・ロシア大会を戦い、今月6日にはオーストラリアの強豪メルボルン・ビクトリーFCへの移籍が発表された本田圭佑(32)が、最新のFIFAランキングで166位のカンボジア代表の実質的な監督に就任することが電撃的に決まった。 メルボルンへ向かう途中でカンボジアに立ち寄っていた本田は12日、首都プノンペンで行われたカンボジアサッカー連盟の記者会見に出席。カンボジア代表の「GM」に当たる『Head of delegation』を、2年契約で務めることが決まったと発表した。 もっとも、本田自身が指導者ライセンスをまだ取得しておらず、かつ現役を続行するためにこの肩書となった。記者会見では自身の役割に関して「監督」と言及している。 「私にとって初めての監督業になります。実際にはメルボルンでプレーするので、すべての試合に関われない可能性がありますが、可能な限りカンボジアのサッカーに関わっていきたい」 登録上の代表監督にはJFLの佐川印刷などでプレーし、本田の個人パートナーを長く務めてきたアルゼンチン人のフェリックス・アウグスティン・ゴンザレス・ダルマス氏(30)が就任。本田は週に数回行うテレビカンファレンスを介して、代表チームの強化を推し進めていく。 現役選手と代表監督、それも他国のA代表を率いる「二足のわらじ」は世界のサッカー界でもほとんど前例はない。ルール上では問題がないことをアジアサッカー連盟(AFC)などに確認した本田は、今回の件を自ら提案したと会見の席で明かしている。 「カンボジアサッカー連盟に『現役を続けながら、カンボジア代表監督を務めることは可能か』と質問したところ、『本気で言っているのならオファーをする』と言っていただき、この場に至りました」 3度目のワールドカップとなったロシア大会を最後に、日本代表からの引退を示唆した。一方で現役続行を表明し、新天地として南半球のメルボルン・ビクトリーを選んだときには意外な思いを抱かずにはいられなかった。本田はかつて、移籍先の条件をこう設定していたからだ。 「試合に出ることを優先して移籍したことが、過去にないんですね。自分が成長できる、あるいは自分が面白いと感じられる刺激的なチームへ、常に挑戦心を抱いて行っているので。面白いから行ってみたい、と思えるクラブがあるかどうかがものすごく重要なことなんです」