なぜ豪移籍の本田圭佑は現役のまま前代未聞のカンボジア代表監督をやるのか
本田とカンボジアサッカー界の接点は、ハリルジャパンの主軸としてロシア大会出場をかけたアジア2次予選を敵地で戦い、自身のゴールなどで2‐0で勝利した2015年11月17日にさかのぼる。 前半を0‐0で折り返すなど、予想外の奮闘を見せたカンボジアは国内のサッカー人気が年々高まっている。そうした状況に魅せられたのか。現在1部リーグを戦うソルティーロ・アンコールFCの実質的なオーナーとなった本田は、世界中で展開しているサッカースクールも開校させた。 そして、実質的な代表監督として、カンボジア人の真面目さを生かしながら、育成年代やクラブチームにも共通する明確なスタイルを確立することをピッチ内の、サッカー以外のカンボジアの素晴らしさを世界に発信していくことをピッチ外のミッションとしてそれぞれ掲げた。 しかし、メルボルン・ビクトリーでのパフォーマンスが中途半端な、あるいは期待を裏切るものとなれば異例の挑戦と合わせて瞬く間にバッシングの対象となるだろう。 過去のワールドカップ・アジア予選では日本と対峙した前出の2次予選が最高位で、しかも日本だけでなくシリア、シンガポール、アフガニスタンからも勝ち点をあげられない最下位で敗退したカンボジア代表の強化が進まなかった場合も、同様の状況を招きかねない。 しかし、本田はこれまでもビッグマウスを放つことで退路を断ち、浴びせられるプレッシャーを前へ進む力に変えてきた。会見で発した胸中の鼓動の高鳴りが伝わってくるような言葉からも、今回の挑戦にかける野心にも近い思いが伝わってくる。 「こういった形の契約は、世界のどこを見ても初めてだと思います。普通ではないやり方を受け入れてくれたことに感謝しています」 今後は国際Aマッチウイークで各国の1部リーグが中断する期間にカンボジアを訪れ、実質的な代表監督として代表チームを指揮する。直近では来月10日にホームで行われる、マレーシア代表との国際親善試合で、『監督・本田』としてデビューする予定だ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)