【#佐藤優のシン世界地図探索87】トランプ革命② 法を超えて自らが法になる「トランプ王」
佐藤 次に、僕がロシアから日本に帰ってきた1994年、1ドルは78円でした。しかし、現在1ドル150円と円安です。トヨタの経常利益は、円ベースで空前の好決算です。 これ、「為替ダンピング」ではないですか? 日本製品というモノを、為替ダンピングでバンバンと米国に出していますよね。 ――言われてみればそうですね。 佐藤 そんな事をやられてしまったら、中国にしても同じです。人民元の評価は、購買力平価ベースで見たらドルと比べて著しく低いんじゃないですか? このように為替ダンピングで、モノが中国や日本からガンガンと送られています。そうしたら、いつまでも米国の製造業は戻りません。額に汗して働く人が豊かになっていくという米国を考えた場合、製造業が国内になければ雇用が確保できません。そして、それが出来ない事には米国は強くなりません。 そうしたら比率はともかく、そういうモノに関税をかけるようになります。関税をかけたくなければ、米国に工場を持ってきて国内の雇用を作れということです。そうすれば、米国の製造業がよみがえります。これ、何か間違えていますか? ――微塵の間違いもございません!! これらはトランプ王の「内在理論」ですか? 佐藤 そうです。内在理論ではありますが、同時に選挙によってその方向性に進む米国を、米国の多数派が承認したということだと思います。 実際、米国の国際経常収支を見てもわかるように、ペトロダラー(オイルマネー)を流したところで、赤字は絶対に改善できませんよね? ――赤字垂れ流し状態です。 佐藤 それをどうやって解消しているかというと、基軸通貨であるドルをどんどん輪転機で刷って、それで発行した債券を外国人に買わせているわけです。これ、踏み倒しているだけですよね? ――確かにそうです。 佐藤 米国も払えませんからね。だから、米国の大学生たちが学生ローンでひとり6~7000万円も借金できるのは、最後に安心して踏み倒せるからです。すると、これは米国全体のモラルハザードです。 ――はい。 佐藤 それが産業、特に製造業を空洞化させているわけです。やはり製造業はきついし、油まみれになるし、筋肉を使って疲れるし大変ですよ。だから、アウトソーシングしています。そして、米国はいま戦争もアウトソーシングしてるじゃないですか。 ――それは、主にどこでやっていますか?