【#佐藤優のシン世界地図探索87】トランプ革命② 法を超えて自らが法になる「トランプ王」
佐藤 要するに、英米の自然法に学ぶべきだというのです。実は、ドイツにも自然法はあります。 ゲルマン民族の血とゲルマンの土地によって作られた自然法であり、この自然法は常に人格によって体現されます。つまり、アドルフ・ヒトラーという総統の人格によって、体現されるということを意味します。 ――なんと! 佐藤 総統がこの血と土地の自然法に基づいて、ワイマール憲法と矛盾する血の純血法やユダヤ人排除法とか、国防法とかを作っていけば、成文憲法を超えるものとなります。 要は、総統というドイツの目に見えない憲法です。この総統を中心にシステムを作ればいいのであって、憲法改正なんてものにエネルギーをかける必要はない、と、ケルロイターは主張しました。 だから、ナチスドイツ時代、憲法はずっとワイマール憲法のままだったんです。 ――素晴らしい論法であります。 佐藤 これと同じことをすればいいわけですから、トランプは憲法改正をしません。そして、改正などせずに司法に対して拒否権を持つことも可能になるわけです。 ――トランプ王自体が法ですからね。 佐藤 これを補助線として考えると、いま起きている事が非常によく分かります。これぐらいしないと米国はもう生き残れないんですよ。 ――どこから見ていけば良いのでしょうか? 佐藤 トランプ王の主張が、果たして間違えているかどうか、そこを見ていくことが重要です。 ――なるほど。 佐藤 まず、トランプは合法的な移民反対していません。「不法移民を入れるな」と言っています。 なぜなら、不法移民は無権利状態に置かれ、低賃金でこき使われてキツくて汚い、危険な仕事をやらされます。これが、一般米国人の賃金を引き下げているんです。一方で、その低賃金によって、米国のエスタブリッシュメントたちは安楽な生活をしているという状況です。 そして、不法移民は入り続けてきます。そうしたら、壁を作らざるを得ないんです。イスラエルがテロリスト流入阻止のために、ガザ地区に壁を作っているのと一緒ですよね。ここまで、何か間違えていますか? ――間違えていないです。メキシコとの国境に壁を作るしかないです。