岸田首相、伊勢神宮参拝後に年頭会見(全文1)スタートアップ5カ年計画策定へ
官民のデジタル投資倍増に取り組む
第2に、「デジタル田園都市国家構想」を実現するため、地方における官民のデジタル投資を大胆に増加させるデジタル投資倍増に取り組みます。歴史があり、自然豊かなこの伊勢の地においても、さまざまな場面でデジタルが実装されています。参道のお土産屋さんや飲食店で人流把握や業務効率化のために、積極的にデジタルやAIの実装が進められているのが1つの例です。地方が持つ自然や文化、そして生活の豊かさといった魅力を維持しつつ、デジタルの力で地域を活性化し、さらには地方から国全体へボトムアップの成長を実現する。本年は「デジタル田園都市国家構想」を具体的な形にする年としていきます。そのために必要なデジタルインフラ整備として、光ファイバーのユニバーサルサービス化、5Gの全国展開、データセンターの地方分散、半導体産業の基盤強化など、官民のデジタル投資を倍増していきます。 第3に、気候変動問題への対応です。昨年末、気候変動問題についての今後の議論の進め方を年明けにお話しすると申し上げました。今われわれは日本が世界に誇る自然と人間活動が調和した空間にいます。自然と調和しながら歴史を紡いできたわれわれこそ、気候変動危機への対応を主導しなければなりません。気候変動問題に本格的に向き合うためには、エネルギーの供給側目線での議論だけでなく、事業者それぞれ、国民1人1人が仕事のやり方を、自分の強みを、生活のスタイルを炭素中立型に変えていくためにはどうしたらいいかといった幅広い議論を行っていく必要があります。
カーボンプライシングを最大限活用
そのため、クリーンエネルギー戦略を議論する会議に私自身が出席し、炭素中立型に経済社会全体を変革していくために、関係各省で総力を挙げて取り組むよう指示を行うことにしました。再エネ大量導入時代に向けた送配電インフラのバージョンアップや再エネ最優先のルール作り、通信・エネルギーインフラの一体的整備、蓄電池への投資強化、再エネはじめ、水素、小型原子力、核融合など、非炭素電源の技術革新、投資強化、地域における脱炭素化、炭素中立型の産業構造への転換と、そのための労働市場改革の在り方など、多くの論点に方向性を見いだしていきます。そしてカーボンプライシングを最大限、活用していきます。これらの検討の結果を新しい資本主義会議での議論にインプットしてもらうことにします。 最後に外交・安全保障について一言申し上げます。私は未来への理想の旗をしっかり掲げ、現実を見据えながら普遍的価値の重視、地球規模課題の解決に向けた取り組み、国民の命と暮らしを断固として守り抜く取り組み、これらを3本柱とした新時代リアリズム外交を推し進めてまいります。特に今年は対面での首脳外交を積極的に進める年としていきます。まず「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日、米、豪、印の協力をさらに高みに引き上げるべく首脳レベルで個人的な信頼関係を深めつつ、膝を交えた緊密な意見交換を行ってまいります。早期に対面で、米国・バイデン大統領や、オーストラリア・モリソン首相と会談すべく調整をしておりましたが、内外の新型コロナの感染拡大状況などに照らし、国内のコロナ対策に万全を期すため、今月の通常国会前の外遊は行わないことと致しました。 ここ伊勢は6年前にサミットが開催された場所でもあります。伊勢志摩サミットでは世界経済などの課題に対するG7の力強いメッセージが発信されました。さらにサミットが終わった直後には、オバマ元大統領による、米国の現職大統領として初の被爆地・広島訪問が実現をいたしました。オミクロン株の影響で残念ながらNPT運用検討会議は延期されることになりましたが、被爆地・広島出身の総理大臣として、核兵器のない世界の実現に向け引き続き全力を注いでまいります。