【独自解説】政府が言う「100年安心」は本当か?5年に一度“年金の健康診断”で見えてきた、世代別「得する人」・「損する人」 経済の専門家が、将来に向けた4つの提言「50代からでも遅くない!」
現在の年金額は、「会社員の夫と専業主婦の妻」のモデル世帯で6月支給分から6001円増えています。そして、夫婦とも自営業の場合は3500円増、夫婦とも会社員だった場合は8502円増といろいろなパターンがあります。しかし今回、財政検証で政府が出してきた夫婦の試算はモデル世帯だけです。 Q.ほかのパターンの年金健康診断は出てないということですか? (加谷氏) 「そうなります。働き方も多様化していますので、いろんなパターンの試算は出していくべきだと思います。一方で、共働き世帯も夫が正社員で妻はパートということが非常に多いんです。政府から見ると、まだモデル世帯のような事実上の専業主婦世帯が続いているので、過去のデータとの整合性もあって、これをモデル世帯としています。しかし、今後はいろんな試算を出していくべきだと思います」 Q.政府も年金で株を運用して、昨年度の運用収益が45兆円以上と、膨大な利益が出ていると聞きますが、これで若い世代の負担を軽くできないのでしょうか? (加谷氏) 「見かけ上利益が出ていますが、売ってしまうと日本株が暴落してしまいます。なので、売るにしても50年とか100年かけて売っていかないと利益は全部使えないのです。東証の時価総額は今1000兆円しかないんですけど、積立金運用が300兆円あり、年金を運用しているファンドがちょっと売ったり買ったりするだけで、今も相場にすごい影響を与えているくらいなので、そう簡単に利益は使えません」
年金資産「4つの経済シナリオ」と、加谷氏が提案する「将来への4つの備え」
今回の政府の年金試算は、4つの経済シナリオを元に試算しています。経済シナリオを紹介するにあたって大事な指標があります。それが「所得代替率」です。これは、現役世代の手取りと比べてどの程度年金が支給されるかを表す指標となります。モデル世帯(厚生年金に40年加入した夫と専業主婦の世帯)の場合、今年度は夫婦で月額約22万6000円となっていて、現役世代の平均手取りが約37万円なので、2024年の所得代替率は61.2%となります。この「所得代替率」について、国の制度では50%を下限としています。 Q.現役世代の手取りの50%を切ると赤信号ということですか? (加谷氏) 「そういう意味になります。そして『50%を下回る場合は、相応の措置を講じること』というのが法律で決められていますので、政府がきちんと掲げている目標だと考えていいと思います」
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