資産バブルでも金融緩和は継続? FRBパウエル議長の発言を読み解く
長期化する金融緩和は資産バブルの温床になっているのか――。アメリカではビデオゲーム販売会社の株が急騰し、FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長の見解に注目が集まりました。パウエル議長の発言から、第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストがFRBの金融緩和への姿勢を読み解きます。 【グラフ】イスラエルのワクチン政策が株価の“先行指標”になる?
金融緩和の長期化が資産バブルの温床に?
1月26、27日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では金融政策の現状維持が決定されました。政策金利であるFF金利を実質0%に据え置いたほか、長期国債等の買い入れ方針を維持しました。また将来の政策指針を示す文言(フォワードガイダンス)も変更しませんでした。 一方、景気の現状認識については「経済活動と雇用の回復ペースはここ数か月間で鈍化」、「(新型コロナウイルスの)パンデミックによって最も悪影響を受けた業種が特に脆弱」といった言及を加えました。こうした慎重な景気認識は「景気が悪いのだから金融緩和を継続する」というメッセージを内包していると思われます。 もっとも、金融緩和の長期化が資産バブルの温床になっているとの見方が増えているのも事実です。実際、パウエル議長の記者会見では最近の資産価格(株価)の上昇と金融政策の関係について質問が寄せられました。
「低金利と資産価格の関係は安定的ではない」
それに対してパウエル議長は「資産価格上昇は金融緩和よりもワクチンや拡張的な財政政策に対する期待が大きい」といった見解を示しました。端的に言えば、金融緩和がバブルを醸成しているのではない、ということです。 その上でパウエル議長は「低金利(≒金融緩和)と資産価格の関係は人々が思っているほど安定的ではない」とも発言しています。これは、金融緩和の継続を前提に株価上昇を見込む向きに釘を刺す意図があったように思えます。低金利が長期間続くからと言って、それだけで株価上昇に確信的になるのは早計という訳です。資産価格の異常な上昇に一定の警戒感を示す意図が垣間見えます。 最近になって一部の小型株が1日で3倍になるなど投機的な動きを繰り返していることについては「金融不均衡については、『マクロプルーデンス』手段を利用することを選ぶ」と発言しました。ここでいう金融不均衡とは資産バブルを意味していると考えられます。 マクロプルーデンスとは金融システム全体のリスクに応じた制度設計を構築するという概念で、具体的には金融規制の強化等を指します。この発言が示唆しているのは「資産価格が急上昇しても、景気が十分に回復するまでは金融緩和を続ける。もし資産価格が急上昇して経済全体に悪影響を与えるなら、金融引き締めではなく、金融規制の強化等を通じてそれを抑制する」ということです。