水森亜土「両手で絵を描くパフォーマンスは、お母ちゃんのアドバイスから。悲しいときはピンク色で絵を描いて。今はお風呂で歌を歌っているときが幸せ」
◆お風呂でシャボンに包まれて 今の暮らしのなかで幸せだなぁと感じるのは、お風呂で歌を歌っているとき。声が響いて上手に聞こえるし、湯気が鼻の穴から入って全身に回る感じが気持ちよくて。湯気はね、ただぼーっと眺めてても楽しいの。 シャボンの匂いも大好き。体にいっぱいシャボンをつけて、ジャボッと湯舟に入る。よく流さないままね。(笑) あとは、山のアトリエにいるときが一番楽しいかな。長野まで車で4時間かけて、月に2、3回は行くんだけど、行くと4日くらいはいます。着いたら、熊よけの鈴と携帯ラジオをつけ、杖をついて、柴犬のココちゃんとお散歩に行くの。 ココという名前はココ・シャネルからつけたんだけど、人間の年齢だと80歳を超えているから、私と同年代ね。 ココちゃんとゆらゆら歩いて、木の根っこにちょっとしがみついたりして、匂いを嗅いで。あっ、ココちゃんじゃなくて、私が嗅ぐの。葉の匂いや、土の中から出ている知らない芽の匂いを嗅いだり。そういうときが、一番うれしくなっちゃう。 ぶんぶん飛んでるミツバチの匂いは、ちょっとイヤだなぁ。匂いに敏感なの。鼻が大きいのかな。(笑) ベランダにタヌキやキツネが来るのも楽しい。ただね、熊には気をつけないと。この間、窓を開けてお風呂に入って、河原をぼーっと見ていたら、真下に子熊が寝ていたの。役所に電話したほうがいいのかな、とちょっと思ったけれど、電話したら鉄砲を持った人が来ると思って黙ってた。そうしたら、熊が寝返りするとき私と目がチラッと合って、ごそごそといなくなってくれました。 絵を描いて、ジャズを聴いて、お風呂に入って、お酒を飲んで、歌を歌って。それさえあれば、悲しいことや困ったことがあっても、この先もきっとなんとかなるんじゃないかな。 <水森さん流 幸せの極意> 木や葉っぱの匂いを嗅ぎながら、 ココちゃんとお散歩するの (構成=篠藤ゆり)
水森亜土