図書館を訪れた移民3世「ルーツ知りたい」 たった1行の情報で感激 渡航記録のデータ〝同姓同名〟の壁
集まる資料で、より正確な情報に
実は、県立図書館がルーツ調査を始める前から、ハワイにある沖縄県人会は同様の取り組みを20年以上にわたり続けていました。その取り組みを生かすためにも、県立図書館は、海外の県人会と連動して、情報を共有したり、県系人にまつわる資料を世界各地から収集したりするようになります。 海外の県人会とつながっていくと、写真などの資料も集まってくるようになりました。複数の資料を横断することが可能になり、集まった資料の分だけ、正確な情報にたどりつくことが可能になってきたそうです。 いまでは、ハワイ、ブラジル、アメリカ、ペルー、アルゼンチン、ボリビア、メキシコ、キューバ、カナダなど、各国から年間200件ほどの調査依頼が寄せられるといいます。 それと同時に、沖縄県系移民の渡航記録データベースや、沖縄県系移民資料アーカイブをネット上に公開し、情報を得ようとする人たちに向けて発信しています。
「出自知りたい」日系人は多いはず
先進的な取り組みをする図書館を表彰する「Library of the Year 2024」の大賞を受賞した際、原さんは、「この取り組みを全国的に広げていきたい」とコメントしました。 その背景には、かつて資料の調査研究で滞在していたハワイで「沖縄に限らず、日系人の資料はどう調べたらいいの?」と聞かれた経験があるからです。 「戦前の移民は広島、熊本、山口などが多く、戦後は北海道から鹿児島まで、全国から海外へ移住した日本人がいます。家族や文化に興味を持ち、『出自を深く知りたい』という気持ちは多くの日系人が持っているはずです。ルーツを調べる取り組みが日本全体に広がるといいなと思っています」と原さんは話します。 図書館というと、本の貸し借りがメインのように思われますが、「この取り組みでは資料を収集し、その中から必要な情報を探す図書館のレファレンス機能を使っています。そのため、図書館がこの事業を進めることに僕の中で違和感は全くありません」と原さん。 「このサービスを喜んでくれる人がいるのがうれしい。他の図書館にも広げていきたい」と話しています。