図書館を訪れた移民3世「ルーツ知りたい」 たった1行の情報で感激 渡航記録のデータ〝同姓同名〟の壁
イベント出展、「誰も来ない」と言われたけれど
このときの出会いから、「ルーツに関する情報が重要だということを知った」という原さん。 半年後に沖縄で行われる「世界のウチナーンチュ大会」で、ルーツを調べるためのブースを設置することにしました。 この大会は、海外移民など、沖縄にルーツを持つ海外の沖縄県系人らが集って5年ごとに開催されるイベントです。 ただ、大会の開催前までは、ルーツを調べるブースはまったく注目されていませんでした。 大会はイベントが盛りだくさんのため、大会関係者からさえも「誰も来ないよ」と予想をされていたのだといいます。原さんも「そんなもんなのか」と思っていたといいます。 ただ、当日を迎えると、大騒ぎに。ブースの前には長蛇の列ができ、4日間の開催期間中、273人ほどが自身のルーツを知りたいと願っていました。 「当初は数人で対応をする予定でしたが、人手が足らず、当日図書館で勤務していた十数人の職員にも駆けつけてもらいました」 大会では、琉球舞踊をはじめ、沖縄の文化や歴史を知ることのできる催しが多く開催されます。 原さんは「文化や歴史に触れることはとても素晴らしいです。一方で、ルーツ調査では本当の意味で自分の先祖のことを知ることができます。これは、豊富な資料があり個人の調査を支援できる図書館にしかできないことだと思いました」と振り返ります。
悩まされた「同姓同名」
大会での大盛況も後押しになり、事業は徐々に大きく展開していきます。 大会の調査で一番の問題は、調査に時間がかかることと同姓同名が多いことでした。 「県内の同じ地域から、ハワイに行った同姓同名の人が5人いるということもありました」 沖縄では、戸籍名とは別に、通称の「童名(ワラビナー)」をつける風習があり、その際によくつけられる名前の一つに「蒲」「カマ」があります。読みはいずれも「KAMA」ですが、男性は漢字、女性はカタカナを使います。 成人してからも「童名」を使い続けた人もいたそうで、「漢字がわからない県系人が『ARAGAKI KAMA』さんをデータベースで探そうとすると、男性も女性も含まれてしまうため、たくさんの人がヒットしてしまうこともありました」 そんなときは、生年月日を頼りに調査を進めたそうです。 調査時間の短縮を図るため、2017年には、琉球大学らの協力も得ながら、約5万人分の名前と生年月日が掲載された渡航記録の簡易的なデータベース化にこぎつけました。