つらい思い「上手に話そうと思わなくて大丈夫」 孤独な若者と向き合う訪問看護 #今つらいあなたへ
つらい気持ちを「上手に話そうと思わなくて大丈夫」
中川さんのキャリアのなかでも特徴的なのが、2021~2023年まで勤めた東京都福祉保健局自殺総合対策室での経験です。厚生労働省による労働安全衛生調査などから、コロナ禍の生活が多くの人のメンタルヘルスを悪化させていることを認識し、危機感を抱いていたと中川さんは話します。とくに若者たちへの影響は深刻で、学校や職場に行けなくなり、人との接触が制限される中で、多くの若者が孤立感を深めていったそうです。 研修やパンフレットなどの作成業務に携わっていた中川さんは、相談するハードルを感じやすい方ができるだけ気軽に行動してもらえるように、相談窓口のリーフレットに「上手に話そうと思わなくても大丈夫」「一言でもいいから話してみてください」というフレーズを入れました。 中川さんは「困っている人は言葉に出ない場合が少なくない。上手く話せなくていいから、とりあえず何かを表出していただく、その表出されたものから困りごと等の悩みを探っていくということが大事だと思っています」と力を込めます。 また、都庁では様々な職種の研修にも触れ、その重要性を認識したそうです。中川さんは、救急隊員の方々に自傷行為や自殺を企図された方への対応を学んでもらうための自殺対策研修を企画しました。 自傷行為を発見したほとんどの人が119番通報をしますが、一般的には軽傷であれば止血の処置をして終わりになってしまうケースが多いといいます。 自傷行為や自殺企図に及んだ方の再発を防ぐためには、救急隊員を含めた関連職種の方やその場にいる人たちが、適切に相談窓口や専門家に繋ぐことも重要だと指摘します。 当事者だけでなく遺族の支援も重要だといいます。身近な人の自殺によって孤独や責任を感じ、その思いをどこに相談したら良いのかわからないケースは多いのです。 東京都は2024年6月に「とうきょう自死遺族総合支援窓口」を公開しました。自治体による遺族支援は珍しく、悩みを抱える人の受け皿になり得るとして、この取り組みをより多くの人に知ってほしいと中川さんは感じています。