紀元前3世紀のシラクサの戦いで、ローマ軍を退けた秘密兵器は、なんと「ソーラーレーザー」…太陽エネルギーを集めて、敵艦を殲滅
押し寄せる敵艦を迎撃
アルキメデスの熱光線兵器は、図に示すように、敵艦が押し寄せる海岸に凹面鏡をいくつも並べたようなものであったろう。 その真偽については、昔から現在まで、さまざまな実験によって検討されている。 天才的数学者であり、哲学者でもあったデカルト(1596~1650)は否定的だったようであるが、デカルトと同時代の科学者がアルキメデスの時代に実現可能な手法で検証した結果や、1973年にギリシャの科学者・サッカスがギリシャ海軍基地で行った実験結果は肯定的だった。 また、マサチューセッツ工科大学(MIT)も2005年、2009年に大がかりな実験を行っている。果たしてその結果はどうだったのか?
木造船に着火した…!
2009年の実験は米国のテレビ番組「怪しい伝説」との共同で、サンフランシスコで約30センチメートル角の鏡300枚を用いて木製の漁船を標的に行われた。 結果として、木造船に火をつけることはできたが、炎上させるまでにはいたらなかった。その主因として、木造船の木に含まれるかなりの量の水分の存在が指摘されている。 近年の実験で使われた鏡は、どういうわけかいずれも「平面鏡」である。 私は、太陽光エネルギーを効率よく集中させるためには「凹面鏡」を使わなければ無理だと思う。MITの実験を行ったスタッフがなぜ凹面鏡を使わなかったのか、私には理解できない。 エネルギーが集中する場所である凹面鏡(回転楕円体の一部)の“焦点”は、前述の太陽熱調理器や双楕円型結晶成長装置などに応用されているし、パラボラアンテナや電波望遠鏡の基本的形状は凹面鏡(回転楕円体の一部)である。
超大型「干渉電波望遠鏡」群
ところで、電波望遠鏡は、通常の光学望遠鏡では観測できない波長の電磁波を観測する装置で、可視光を放射しない星間ガスなどを観測する際に有効である。 しかし、電波は可視光に比べて微弱であり、望遠鏡の分解能はその口径に比例し、観測波長に反比例する。電波の波長は可視光の波長の1万倍以上だから、光学望遠鏡と同程度の分解能を得ようとすれば、電波望遠鏡(アンテナ)の口径は巨大なものになってしまう。 世界最大の電波望遠鏡はプエルトリコにあるアレシボ天文台のもので、アンテナの直径は、実に305メートルである。日本にある電波望遠鏡では、国立天文台野辺山宇宙電波観測所にある直径45メートルのものが最大である。 巨大化の弱点を克服するために開発されたのが、複数の電波望遠鏡を“合成”(開口合成)し、実質的に大きな口径の電波望遠鏡とする「干渉型電波望遠鏡」である。 たとえば、アメリカ・ニューメキシコ州サンアグスティン平原に設置されている直径25メートルのパラボラアンテナ27基からなる超大型干渉電波望遠鏡群である。オペレーションセンターは80キロメートルほど離れたニューメキシコ工科大学のキャンパス内に置かれ、宇宙からの微弱な電波などの観測を行っている。