災害や遭難時に強い! 専用端末やアンテナも不要! 今年は「スマホと衛星の直接通信」元年だ!!
能登半島地震から1年。あのときは衛星通信を活用したシステムが情報収集において大活躍したが、今年はより実用的な衛星との直接通信システムが登場するという。その最新事情を解説します! 【写真】音声通話実験に成功した人工衛星BlueWalker3ほか * * * ■今年は衛星通信がもっと身近になります! 1年前に発生した能登半島地震において、救助活動や被災者たちの情報収集に活用されたアメリカ・スペースX社の衛星通信システム「Starlink」。国内のキャリアはこれを被災地に搬入し、車両や船舶に搭載した移動基地局、そして一部損壊した基地局に接続することで、被災した通信インフラを補った。 今年は、そんな衛星通信システムを誰もが使える環境が整うという。スマホと人工衛星とが直接通信を行なう新システムについて、ITジャーナリストの法林岳之さんにお聞きします。 ――最近話題のスマホと衛星の直接通信とは、どういった特徴があるのですか? 法林 これまでのStarlinkを活用した衛星通信は、衛星からの電波を受信するアンテナや端末、電源などの専用機器が必要でした。そして、行政や企業側はこれらの専用機器を事前に準備し、災害時には現場への搬入作業の必要もありました。 一方、スマホと人工衛星との直接通信の場合は、一般的なスマホがあり、それこそ空が見える地域ならどこでもSMSの送受信が可能です。つまり、専用機器は必要なく誰でも使えることから、災害や遭難に強いのが特徴なのです。 ――これはどういったシステムを利用しているのですか? 法林 KDDIと、StarlinkのスペースX社が共同開発した通信システムになります。まず、このシステムに必要なのは高度340㎞ほどを飛行する低軌道衛星です。これまでのStarlink用の衛星は高度約550㎞を飛行していましたが、これではスマホとの直接通信ができません。 スペースX社は昨年1月に6基、約1年後となる昨年末には300基以上の低軌道衛星を打ち上げ、これによりシステム的には世界中で空が目視できるエリアならオール圏内という通信環境が整いました。日本国内でも昨年10月に実証試験が完了しており、海外では特例的に災害で活用されたケースもあります。 ――特例とはどういったケースなのでしょう。 法林 昨年9月と10月、アメリカのフロリダ半島に大型ハリケーンが上陸しました。この時点で、アメリカではスマホと衛星の直接通信システムは完成していましたが、電波自体の送受信に関する法律面が〝未整備〟の状態でした。 しかし、アメリカ政府は大規模災害ということで特例的に認可し、通信インフラが遮断された被災地からは救助要請や安否確認に関する12万件にも及ぶSMSがやりとりされ、スマホと衛星の直接通信が災害時には大いに活用できることが確認されました。 昨年、馳浩石川県知事に通信関連の災害対策について取材したとき、「被災された方々は情報発信できないこと、情報の収集をできないことが恐怖であり、ストレスになります」という発言をしていました。 なので、専用機器を必要とせず、一般的なスマホを使用して衛星経由でSMSを送受信し、被災・遭難状況や位置情報を発信できるシステムは心強いと考えています。