レジェンド・澤は、本当に女子W杯に出場できないのか?
6月にカナダで開催される女子ワールドカップへ向けて、女子サッカー界のレジェンド、澤穂希(INAC神戸レオネッサ)をめぐる去就がかまびすしさを増している。 なでしこジャパンの佐々木則夫監督は、3月4日からポルトガルで開催される国際親善大会アルガルベカップに臨む代表22人のなかに澤を招集していない。13日に行われたメンバー発表会見でその理由を尋ねられた指揮官は、それまでの饒舌を一変させて明言を避けている。 「一選手だけではなく、他の選手も選考していないことがある。一選手に対してコメントするのはフェアではないので、控えさせていただきたいと思います」 アメリカやドイツを含む世界中の強豪が集うアルガルベカップは、ワールドカップの前哨戦として位置づけられている。佐々木監督も「最終的な決定ではないが、それ(ワールドカップ代表メンバー)に近いメンバーをエントリーした」と本番モードで臨む方針を示している。 アルガルベカップの代表からワールドカップのそれへ入れ替わるのは、佐々木監督によれば数人程度とされている。ゆえに澤の去就が取り沙汰されているわけだが、ここで注目すべきなのは澤が長年にわたって背負い続け、いまや象徴ともなっている背番号『10』を空き番としている点だ。 昨年9月の韓国・仁川アジア大会と同10月のカナダ遠征でも、澤は招集されていない。通し番号での参加が義務づけられる前者ではFW高瀬愛実(INAC神戸レオネッサ)が『10』番をつけたが、後者では空き番となっている。ここから伝わってくるのは、澤へのリスペクトとワールドカップ本番での復帰へ向けた配慮といっていい。 世界中を驚かせ、日本中を感動させた4年前のワールドカップ制覇は、得点王とMVPに輝いた澤の存在を抜きには語れない。その年のFIFAバロンドールを日本人選手として初めて受賞し、銀メダルを獲得した2012年のロンドンオリンピックでもなでしこジャパンをけん引した。 華々しい快挙ばかりにスポットライトがあてられているが、2000年のシドニーオリンピック出場を逃し、当時のL・リーグが存続の危機に直面した冬の時代を支えてきたのも澤だった。読売ベレーザ(現日テレ・ベレーザ)でデビューしてから実に四半世紀弱。波乱万丈に富んだそのサッカー人生には、男女の垣根を越えて、サッカーに関わる誰もが最大級のリスペクトを払っている。