レジェンド・澤は、本当に女子W杯に出場できないのか?
澤が選外となったことに対して、MF川澄奈穂美(INAC神戸)はこんな言葉を口にしている。 「いつまでも頼っていられないのですが、一緒に代表でやりたい気持ちもある」 存在感が大きすぎるゆえに、澤がいればどうしても周囲がその大きな背中を見てしまう。アルガルベカップではワールドカップで台風の目となりそうなフランスとも対戦する。佐々木監督が昨秋のカナダ遠征とほぼ同じメンバー構成、つまり澤を意図的に外した状況下で他の選手の特にメンタル面を強化し、直前の段階で満を持してレジェンドをチームに加えるプランを練っていることも十分に考えられる。 澤が不在の間にキャプテンの宮間あや(岡山湯郷Belle)が攻撃的MFからボランチに移り、左足からの正確なフィードを武器とする宇津木瑠美(モンペリエ)も存在感を高めてきた。坂口夢穂(日テレ・ベレーザ)を含めて、ボランチのポジション争いは激しさを増している。それでも、豊富な経験に裏打ちされた澤の危機察知能力やゴールへの嗅覚、ここ一番の決定力の高さは誰もが認めている。 4年前のワールドカップでは、当時36歳のGK山郷のぞみが精神的支柱としてチームを後方から支援した。大舞台になるほど「まとめ役」となるベテランが必要なことは、男子のワールドカップにおいても2002年日韓共催大会の中山雅史と秋田豊、2010年南アフリカ大会の川口能活が証明している。 監督とチームの橋渡しを務める「まとめ役」は豊富な経験と実績、人望の厚さ、献身的に尽くせる自己犠牲の精神などがそろって初めて務めることができる。そして、いま現在の女子サッカー界を見渡せば、ベテランの域に達した選手のなかで「まとめ役」を務められるのもまた澤しかいない。 ピッチの中だけでなく、ピッチの外でも必要不可欠な戦力として。ワールドカップの代表メンバー発表予定は5月上旬。 その席で佐々木監督から背番号『10』とともに「澤穂希」の名前が読み上げられ、男女を通じて世界で初となる6大会連続のワールドカップ出場の快挙が達成される可能性は極めて大きい。 (文責・藤江直人/スポーツライター)