「またねトゥインゴ」ルノー トゥインゴへのオマージュ We miss you…
だがここで一つあらかじめ断っておきたいのだが、今のトゥインゴに乗りながら記憶の糸をさらに手繰って、「あの」初期型トゥインゴにまでさかのぼって思い出しながら、似ている部分だとか共通する箇所とか、どこかに残っているはずの初代の香りのようなものを根掘り葉掘り探すのは意味のないことなのではないか、ということである。
後ろにエンジンを積んで後ろのタイヤを、3気筒ターボと6速EDCのトランスミッションの組み合わせで駆動して走る、4ドアでパワーステアリングとパワーウインドウとシートヒーターのついたスマートとの兄弟車を、初代、あるいは2代目のトゥインゴと比べてどこかに残っている残り香のようなものを探したとしても、それは郷愁からくる趣味のようなもので3代目トゥインゴの客観的なインプレッションには何の意味も持たない。今のトゥインゴがルノーの一番小さいセグメントの車として、ファイナルエディションともいえる今回の試乗車において、発売されてから10年近く経過し、「今」どれだけの完成度と実用性を持っているか、それこそが大切なのだから。
今回、ルノージャポンからお借りしたのは0.9リッターターボエンジンを搭載するトゥインゴ インテンスEDCだったが、誰に聞いても「素敵な色」と言われる水色に塗られた車に乗ってみての最初の感想としては、6速EDCの変速が初期のモデルと比べて洗練され、よりシームレスになり、記憶の中の現行トゥインゴの姿よりもはるかにスムーズで望外に速く走ることができる、ということに感銘を受けた。とはいっても相変わらず極低速域やストップアンドゴーを余儀なくされる渋滞、あるいはちょっと傾斜のついた駐車場での車庫入れなどでは今一つ洗練には欠けひょこひょことした挙動が出るし、広報車がまだ2,000kmあまりの走行距離ということもあり、足の動きもどことなく突っ張った乗り心地ではあった。 街中で印象的なことは、とにかく市販車としては最小ともいえる回転半径のため、驚くほど小回りが利くということだ。ここじゃあ無理だろうというような道でも簡単にUターンができるし、極小スペースの駐車場では小さいボディサイズと相まって無敵の機敏性を持つ。この部分だけでもトゥインゴはコミューターとしての資格十分だし、押しなべて大きくなってしまった一つ上のセグメント(ポロや208でさえ3ナンバーの時代なのには、ちょっと疑問を抱く)に比べて圧倒的に使いやすい。 ただし一つだけ気を遣う部分がトゥインゴにもあり、それはタイヤのハイトで、特にリアタイヤは45%のプロファイルのタイヤを履いているため、コインパーキングや段差などでホイールにガリ傷をつけてしまわないかずっと気になった。リヤエンジン故なのか、これほどの扁平率のサイズが必要なのかどうかはわからないが、もう少し穏やかなサイズのタイヤサイズであったなら、機動性と実用性は無敵になったのに、と常にホイールのことを忘れないようにして運転していたのであった。