外れ1位でも金足農・吉田輝星に失望なく「中田翔選手に会いたい」
秋田ではTBSの系列局がなく地上波のドラフト中継が映らなかった。控え室の別回線のモニターにはドラフト会場の映像が映し出されていたが緊張感が漂っていたという。 午後5時に各球団の首脳陣が入場して始まったドラフト会議の「第一巡選択希望選手」が、楽天から順に広島まで読み上げられたが、金足農・吉田輝星の名前は出なかった。 夏の甲子園の決勝で戦い、U-18代表で共に戦った3人の名前が先に出ただけに吉田の心はざわつく。1位の抽選が終わり、そして、外れ1位へ。 楽天が立命大の辰巳涼介、阪神が辰巳、オリックスが天理の太田椋、横浜DeNAが、東洋大の上茶谷大河、そして日ハムが吉田の名前を読みあげた。 「たくさん1位が呼ばれている中で呼ばれました。安心しました。うれしかった。ほっとした思いが強かったです」 巨人、ソフトバンク、ヤクルトと、外れ1位の入札が続いたが、吉田に競合チームはなく、その時点で日ハムの交渉権が確定した。チームメイトの祝福を受け、直後に、中継局のインタビューを受けた吉田は、「すごく決まってうれしいです」と、まだ緊張した面持ちだった。 ドラフト前には、「順位とかいろいろ考えました。早く決まって欲しい。早く、この日が来て欲しいという気持ちでした」という。 いざ蓋を開けてみれば1位指名は1球団もなく、外れ1位となったが、評価への失望感よりも憧れだったプロ野球選手になれたという感激の方が大きい。 「入団できることに感謝しています」 素直だ。 ドラフトの1巡指名が終わって体育館に設定された会見場に現れた吉田の表情はまだ硬かった。 日ハムの印象を聞かれ、「大谷選手、清宮選手と、高校からドラフト1位でいった選手が活躍しています。若いチーム。凄いなと思います。一戦一戦、負けられない気持ちが伝わってくる(球団)、そういう球団に入れることがうれしいです」と、高校出身のルーキーの育成には定評のあるチームの一員となれることの喜びの言葉を重ねた。 北海道と秋田はそう遠くない。 同じ雪国である。 「北海道は質のいい雪が降ります。また雪かあ」 今日、26日には、さっそく栗山監督が挨拶にくるが、「高校生の選手を育てるのがうまいなあ。やさしい感じで育ててくれているなあと感じます」という印象を語った。 生真面目で実直な受け答えを続ける吉田の口から意外な名前が飛び出したのは、日ハムの誰に会ってみたいか?という質問に対してだった。 「野球を見ていて、会ってみたいなと思ったのは中田翔選手です」 吉田とは対極にあるような強面のチームリーダーの名前を出した。 強面だけど大丈夫ですか?と突っ込まれ「とくに(強面だとか)意識はしていません。4番を打ったり、(チームの勝利への)役割を担う雰囲気が凄い」と絶賛。 「バッターとして一番嫌な球はどういう球かを聞いてみたい」と続けた。 純粋だからこそ、こういう発想が生まれる。 「中田翔選手に会いたい」だけで、もう、チームに溶け込むためのつかみはOKだろう。