「年収は4000万円の選手も…」箱根駅伝“山の神”が率いる新チームの“規格外”…「陸上には稼げる余地が」「来年から本気でニューイヤーを狙う」
脱「コストセンター」…陸上部を“黒字化”する方法は?
もうひとつ、MABPがユニークなのが選手たちの働き方だ。 多くの場合、実業団選手は時短勤務で、総務部などに所属して事務作業に従事する。ところがMABPでは、選手自らが陸上部の売り上げの一端を担う。 競技力の向上はもちろんだが、単にレースや練習に励むだけではなく、一人の社員として陸上部の運営にも積極的に関与することが求められるのだ。 例えば、ユニフォームのスポンサー営業には選手も同席する。選手の同席で成約率を上げる営業的な戦略に加えて、「スポンサーの意図」を理解することで、業界構造の理解にもつながる。 また陸上教室を事業として運営し、選手たちは走るコツを教える講師役を担う。競技以外とも接点をもちながら、陸上選手の社会的な存在意義を拡大していく取り組みだ。 「実業団チームがどんな構造で成り立っているのか、選手たちには仕組みやお金の流れにも目を向けてほしいと思っています。陸上界を持続可能にするためにも、ビジネス面も理解した選手を増やしていきたいと思っています」(高木) 「スポーツ部門をコストセンターとして扱うと、企業としては継続性がありません。継続性がなければ、いずれそのスポーツは廃れてしまいます。でも、陸上には稼げる余地がある。将来的に陸上部だけで黒字化できるように、選手にも頭を使ってもらいます」(松尾) 選手には、SNSの利用も義務付ける。SNSコンサルタントのサポートのもとアカウントを運営し、チームや選手自身のファンを獲得するのも仕事の一環だ。 「引退後への不安を抱えながら競技に取り組んでいる選手を、何人も見てきました。でも、それだと精神的にきつ過ぎる。だからこそ、知名度を獲得しやすい現役時代からSNSで認知をとり、引退後の選択肢を増やしておくことが必要だと思います」(高木) 引退後には、MABPの本業であるM&A仲介業務に携わることも可能だが、いきなり始めるにはハードルが高い専門的な仕事でもある。 実業団の世界では、アスリートが引退後にビジネス職に配属されても、他の社員とのスキルの差を痛感し、居心地の悪さから退職に至ってしまうケースは少なくない。 陸上で華々しい結果を残しても、それをいかせる現場がないのが実情だ。そこで、MABPでは引退後の受け皿として、陸上を事業化して部署内で営業や講師などの仕事をつくっておく。そうすれば、選手たちは引退後も陸上のスキルをいかしながら社員として働けるというわけだ。 取り組み自体はこれからで実現性はまだ不透明だが、報酬設計と併せた独立採算の仕組みが確立すれば、実業団チームの新しいスタイルとして、業界に大きなインパクトをもたらすだろう。
【関連記事】
- 【画像】「こ、こんなに差が…!?」最大報酬は4000万円…神野大地が選手兼監督のMABP陸上部の報酬テーブルがコチラ&「フォーム激似やん…」かつて法大エースだった父と現青学大エース・黒田朝日の激走も写真で比較
- 【最初/#1を読む】箱根駅伝“3代目山の神”青学大・神野大地のいま…“プロ転向”は失敗だった?「もうダメかもな、と何度も」本人が明かす胸の内「それでも心の奥に…」
- 【前回/#2を読む】「神野は終わった」と言われても…箱根駅伝“3代目山の神”に新チームが“選手権監督”オファーを出したワケ「もっと好記録の選手はいる。でも…」
- 【秘話】「いまは山に妖精や名探偵までいるけど…」箱根駅伝“5区で区間新”青学大・若林宏樹が語った“若乃神”秘話…「最初は何、言ってんだろうと(笑)」
- 【話題】箱根駅伝「青学大の山が強すぎる」問題…「平地は全く走れなくなる」選手が語った“特殊区間への覚悟”それでも「山に懸ける想いがあれば…」