父になった井上拓真が再起戦を“進化“示す圧勝劇…東洋太平洋王座を2階級制覇!
この試合に向けてのTシャツには「リボーン(再生)」の文字をデザインした。 2019年11月にWBC世界バンタム級正規王者のノルディ・ウーバーリ(フランス)との統一戦に判定で敗れて以来の再起戦。この1年、なにかがあるたびに「悔しさを思い出した」という、あの敗戦を乗り越えての再出発である。 リボーンはできたのか? そう聞かれ「少し近づけたのかな」と笑う。 真吾トレーナーは「技術をディフェンス、攻撃の両方で見せられた。成長している。リボーン?できたんじゃないですか」と言う。 目標は暫定ではない正規の世界王者奪取である。 「もう一度兄弟で世界王者になりたい」 リング上でそう約束した。 「長丁場で距離を保ちポイントのとれるボクシングができた。これを貫き、なおかつ見せ場をつくれれば、絶対(世界を)とれる。手ごたえはつかめてきた。統一戦に負けてから兄弟でチャンピオンになるんだという思いが強い。尚だけが世界王者では、お父さんも納得がいかないと思う。しっかりと結果を出していきたい」 バックヤードでもそう力強く言い放った。 当初、兄がIBF王座を返上、その王座決定戦を拓真がターゲットにするというプランもあったようだが、大橋会長は、この日、「その流れになる」と、尚弥のIBF王座の指名試合を優先する考えを明らかにした。WBAは兄。WBOは兄と因縁のあるジョンリル・カシメロ(フィリピン)。WBCもウーバーリと4階級制覇王者のノニト・ドネア(フィリピン)の対戦が直前に両者が新型コロナに感染したことで流れて暫定王者が誕生するなど混沌としている。だが、井上拓真にブレはない。やるべき課題はわかっている。兄が、統一に向かう“黄金のバンタム戦線”に割って入る決意だ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)