井上尚弥の”暫定対抗王者”誕生に疑念の声
ボクシングのWBC世界バンタム級暫定王座決定戦が19日(日本時間20日)、米国コネティカット州アンカスビルで、元IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(28、プエルトリコ)と元WBA同級暫定王者のレイマート・ガバリョ(24、フィリピン)の間で争われ、ガバリョが2ー1の判定で王座を獲得した。試合は手数と積極性ではガバリョが上だったが、クリーンヒットさせたラウンドはほとんどなく、逆にロドリゲスが的確なカウンター攻撃を放ってぐらつかせたラウンドが多かったため、権威のあるリング誌をはじめとした米メディアや中継したショータイムの解説陣は「疑問の判定」「驚きの判定」と疑念の声を上げた。ロドリゲスは、昨年5月に英国グラスゴーで行われたWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)の準決勝でWBA世界同級スーパー、IBF世界同級王者の井上尚弥(27、大橋)にTKO負けしている前IBF王者。この試合は当初、WBC同級王者のノルディーヌ・ウーバーリ(34、フランス)に元5階級王者で同級1位のノニト・ドネア(38、フィリピン)が挑むはずだったが、ウーバーリが新型コロナウイルスのPCR検査で陽性反応が出たことで休養王者となり、代役としてロドリゲスが抜擢されドネアと同級の正規王者決定戦を戦う予定だった。 しかし、直前に今度はドネアにも陽性反応が出て代役にガバリョが指名された。その後、ドネアが「偽陽性」を主張したが認められず代役vs代役の代役で暫定王座決定戦が行われた。ガバリョは、今後、休養王者のウーバーリと統一戦を戦うことになるが、4団体のベルト統一を目指している井上尚弥は、ひょっとすると、この疑惑の王者と対戦することになるのかもしれない。
ロドリゲスが冷静なカウンター攻撃
判定結果が出た瞬間、中継局「ショータイム」のアナウンサーは、思わず、こう叫んだ。 「アンビリーバブル(信じられない)」 ジャッジの採点は2人が116-112、115-113でガバリョを支持、もう一人は118-110でロドリゲスを支持した。ショータイムの殿堂アナリストであるスティーブ・ファーフッド氏は同じく118-110でロドリゲス支持の独自採点をつけていた。 母国の英雄、6階級制覇王者のマニー・パッキャオの代役デビュー戦に重なるような“幸運のベルト”を手にしたガバリョは涙を流して歓喜したが、ロドリゲスは憮然とした表情を浮かべマスクをつけて、すぐにリングを降りた。 試合はガバリョが積極的に前に出て、それをロドリゲスが高度なディフェンス技術と冷静なカウンターで迎え撃つという展開だった。ロドリゲスは1ラウンドから精度の高い右のカウンターと、左のジャブカウンターをヒットさせた。4ラウンドには、ガバリョの左に合わせた右のカウンターでフィリピン人をダウン寸前にまでにぐらつかせた。