「思っている以上にウクライナは日本を評価していた」 前駐ウクライナ大使が明かす開戦時のリアルとゼレンスキーの卓越した能力
犯罪者を徴兵し、最後には北朝鮮兵まで…
ウクライナ侵攻はプーチン大統領の強い思い入れで始まった戦争ですから、彼が振り上げた拳を下ろすしか終戦の道はない。それは確かにそうなんですが、一方で、国民の支持がなくなれば、独裁国家も倒れてしまいます。 22年9月にロシアは30万人の動員を開始しましたが、これが国民の大変な反発を招きました。言論統制を敷いているので反発の声は外に漏れ出しませんが、この件でロシアの若者が100万人近く国外へ逃亡したといわれています。それに若い子を持つ母たちの怒りも買い、以降プーチン大統領は大規模な動員をかけられていません。 その後、プーチン氏が頼りにしたのは民間軍事会社のワグネルでしたが、結末がどうなったかはご承知の通りです。次は重大な犯罪者を徴兵し、その次は軽犯罪者、さらには兵士不足を補うために外人狩りまでやっている始末。そして最後に行きついたのが北朝鮮兵というわけです。ゼレンスキー大統領が「このまま行けばプーチンは拳を下ろさざるを得なくなる」と考えているのは間違いなく、そのような見通しに基づいて「勝利計画」は策定されたとみるべきでしょう。 まだ「終戦のシナリオ」といえるところまで具体化されているわけではありませんが、恐らくウクライナがもう少し戦況を好転させたところでこの戦争は終わりに向かう。これが現実的な筋書きなのではないかと私は考えています。 松田邦紀(まつだ・くにのり) 前駐ウクライナ大使、1959年、福井県出身。東京大学教養学部を卒業し、82年に外務省入省。欧州局ロシア課長を務めた後、駐イスラエル大使館公使、デトロイト総領事、香港総領事、駐パキスタン大使などを歴任した。2021年10月に駐ウクライナ大使に就任し、今年10月に退任。 「週刊新潮」2024年12月26日号 掲載
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