見た目がそっくりな「スダチ」と「カボス」、「ユズ」が父親の2種は何が違う?近年では魚の養殖にも使われる柑橘の歴史を解説
農林水産省が実施した「作況調査(果樹)」によると、令和4年産果樹の結果樹面積は16万6,000haで、15年前と比べて4万4,200ha減少したそうです。近年の経済不況も手伝って、果物が食卓に並ぶ機会が少なくなっていますが、技術士(農業部門)で品種ナビゲーターの竹下大学さんは「日本の果物は世界で類を見ないほど高品質。それゆえ<日本の歴史>にも影響を及ぼしてきた」と語っています。そこで今回は、竹下さんの著書『日本の果物はすごい-戦国から現代、世を動かした魅惑の味わい』から「スダチとカボス」についてご紹介します。 【書影】日本発展の知られざる裏側を「果物×歴史」で多種多様に読み解く、もうひとつの日本史。『日本の果物はすごい』 * * * * * * * ◆スダチとカボスの違い スダチとカボスは、どっちがどっちだったかわからなくなりがちな柑橘だ。生産量はカボスのほうがやや多いものの、よきライバルに見える。 直径3~4cmで小さいほうが徳島県特産のスダチ、5~6cmと少し大きいほうが大分県特産のカボスである。 見た目はそっくりだが、果肉の色はまったく異なる。ライムに似た黄緑色がスダチで、黄色いのがカボスだ。香りはスダチのほうが強い。 味についても誰もが認識できる程度の違いがある。やや雑味を感じるのがスダチで、スッキリしているほうがカボスだ。 上品な果汁感を楽しみたければカボス、料理の味に深みを持たせたければスダチと、使い分けしてみたい。
◆スダチはいつ頃現れた? スダチがいつ頃現れたのかはわからない。徳島では半分野生状態で広まった古い柑橘だ。名前のスダチは酢橘からきたらしい。 栽培化されたのは昭和30年代以降で、1979年(昭和54年)に始まった温州みかんからの転換事業で生産量が増えた。 優良個体探索の結果、1975年には徳島市渋野町(しぶのちょう)で発見された種子の少ない個体が「徳島1号」と命名されて、県の奨励品種となっている。 また徳島県農林水産総合技術支援センターは、3月まで果皮が黄色くならずに濃緑色を保つ「勝浦(かつうら)1号」を育成。2024年(令和6年)に品種登録された。なお、徳島県の県花はスダチの花だ。 1961年に徳島大学により果皮から発見されたスダチチンは、スダチにしかない香気成分。ノビレチンに構造が似ており、最近になって抗肥満の健康機能性が期待できることがわかった。