韓国・尹大統領 なぜ戒厳に突き進んだのか? ワケを探ると見えてきた「孤独な権力者」の極地
突然、「非常戒厳」を宣言して、世界を混乱の渦に巻き込んだ韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。なぜ戒厳へと突き進んだのか。そのワケを探ると「孤独な権力者」の姿が透けて見えてきた。
■なぜ“戒厳”? 尹大統領は…
尹大統領は45年ぶりに非常戒厳を宣言し、韓国の民主主義を脅かす未曽有の事態を引き起こした。かつて、民間人160人以上が犠牲になる惨事にもつながり、国民が忌み嫌う“戒厳令”。なぜ尹大統領は、国民が嫌う「戒厳」に突き進み、国を、そして世界を混乱に陥らせたのか。 尹大統領は、国民に対し「野党が国政をマヒさせており、その反国家的な悪を知らせるために戒厳を行った」と説明している。 一見、“後付け”の言い訳のようにも聞こえるが、背景を探ると、大統領自身が“本当に”そう思い込み、戒厳に突き進んだ可能性が見えてきた。
■“ねじれ国会”解消の予兆も…
時計の針を少し戻し、2024年2月。任期中盤に差しかかった尹大統領。この時は久々に陽気だったはずだ。自らが打ち出した医療改革に国民の反応も上々。世論調査では76%が肯定的に評価した。上り調子で、4月に控えていた総選挙に向けた“弾み”となるはずだった。 尹政権は2022年の船出から、いわゆる“ねじれ国会”に悩まされてきた。野党が大きな壁となり、推し進めたい政策が阻まれてきた。 「総選挙直前に、支持が高まるきっかけを得た」。“ねじれ国会”を解消できる予兆を感じ、尹大統領は意気揚々だったに違いない。 しかし、その期待は、もろくも崩れ去る。医療界の猛反発を受けて、医師がストライキに入り、緊急医療などは機能不全に。そうなると、医療改革への支持も急にトーンダウン。医療改革はむしろ、政権への“ダメージ”になった。 結果、総選挙では与党は惨敗。“ねじれを解消し、任期後半は順風満帆に過ごす”という尹大統領のもくろみは、かなわなかった。 韓国メディアによると、尹大統領が本格的に戒厳を宣言すると考え始めたのは、総選挙直前の2024年3月。医療改革がほぼ頓挫し、総選挙で“ねじれ”解消の望みがついえたように伝えられ始めたころだ。戒厳でしか局面を打開できない…と追い込まれてきたのかもしれない。 ただ、尹大統領を苦しめたのは“ねじれ国会”だけではない。火種は身近にもあった。