韓国・尹大統領 なぜ戒厳に突き進んだのか? ワケを探ると見えてきた「孤独な権力者」の極地
■“夫人疑惑”で荒波に
尹大統領に追い打ちをかけたとも言えるのは、ファーストレディー・金建希(キム・ゴンヒ)夫人をめぐる数々の疑惑だ。 一時は9万人のファンクラブができるほどの人気を集めた金建希夫人。しかし、その人気とは裏腹に、これまでに様々な疑惑が指摘されている。 輸入車ディーラーの株価操作に関わったとされる疑惑。夫人が運営する展示会社に大手企業から協賛を受けたことをめぐる疑惑。高速道路が、親族が所有する土地の近くに通るよう建設計画を変更させた疑惑――。かつての名フレーズを借りれば、まるで「疑惑の総合商社」だ。 中でも一番の打撃となったのが、いわゆる“ディオール疑惑”。知人の牧師と面会した際に、高級ブランド「クリスチャン・ディオール」のバッグを受け取ったとされる疑惑だ。受け取る一部始終が“隠し撮り”されていたことから「逃れられない証拠がある」として、野党は追及に拍車をかけた。 しかし、疑惑に対して尹大統領は“だんまり”を決め込んだ。なんら説明がされないことに国民も不信感を強め、支持率は低迷。 その後、夫人のディオール疑惑については、検察による捜査が行われ、「嫌疑なし」との判断が示されたが、野党の攻撃は続いた。 国会で多数を占める野党。夫人の疑惑を捜査する特別検察官任命の法案を国会で可決させては、大統領側が拒否権を行使するという攻防が3度続いた。 防戦一方の中、尹大統領は起死回生を狙い、戒厳に突き進んだとみられているが、大統領の周辺環境なども影響したのではとの指摘もある。
■スマホとYouTube
実は尹大統領、日頃からスマートフォンでネットニュースを見たり、YouTubeを愛用したりしているという。この「スマホからの情報」が災いしたとの指摘がある。ネットやYouTubeで自分に都合の良い情報ばかりを繰り返し見聞きし、次第に「野党は巨悪」との極端な考えに傾いていったのではないかというのだ。 さらに、これに拍車を掛けたのが「側近」だ。