「そんなの関係ねえ!」今は悩みを抱えた子どもに寄り添う"海パンおじさん" 小島よしお
いじめられてたけど「そんなの関係ねえ!」で学校に行く勇気が出た、と言う手紙
――いじめ問題はどう思いますか。 いじめ事件でよく「いじめに気がつかなかった」というじゃないですか。『いじめのある世界に生きる君たちへ』という本にあったんですけど、いじめの対象を孤立化させることからはじまって、次第に無力化させ、最終的には透明化させてしまうというんです。そうなるといじめられる子どもは、生徒からも先生からも見えていない。だから、いじめが確実にあるのに、まるでないかのように扱われてしまう。実際、教室には派閥もありますから、いじめの温床を作らないためには、クラス替えの頻度を上げるなど、固まりかけた空気を流動的にするのはどうかなって思います。子どもにとって環境を変えるというのは大変ですけど、社会人になっても新しい環境に順応する必要はあるので、社会に出たときの練習というか、子どもたちがそれに慣れる機会がたくさんあってもいいんじゃないかと考えますね。 ――ほかに気をつけたいことはありますか。 テレビのランキング番組なんかで人と比べたり、強調するように優劣をつけていますが、そういう影響もあるような気がしていて…。いじめって、あいつは違うぞと些細(ささい)なことから起きることを考えると、テレビでの表現の仕方も工夫しなくてはならないのかもしれません。また、子どもがいじめをしないようにするのは重要な課題ですけど、極論、大人の社会でもいじめが起きないように気をつけるべきだと思います。それとテレビの芸人いじりは、いじる方もいじられる方も笑いを生む同じ方向を向いてやっている“特殊技術”。それがないのに外側だけ真似しちゃうといじめになっちゃう。芸人が出張授業をして、「これってとても難しいことだからね」と笑わせながら教えてあげるのも面白いかなと思います。テレビの影響はとても大きいので、テレビがやることを咀嚼(そしゃく)して伝えてあげる人がいるといいなと思います。 ――子どもたちと向き合う機会の多い小島さんですが、もっとも心に残る出来事は何ですか。 子どもたちからたくさんお手紙をいただいたことです。「ずっといじめられていたんですけど、『そんなの関係ねえ!』を見て、がんばって学校へ行くようにしました」という内容。実際に僕に会いに来て、そう言ってくれた子もいました。僕のギャグがお役に立てたというか、逆に、僕のほうがそんな子どもたちから勇気づけられました。さっき挨拶の話でも触れましたけど、リアルに言葉を交わしてコミュニケーションするって心に響きます。大きな声で挨拶するというのもそうですし、やっぱり言葉の力ってすごいなあと。 目を凝らしてちょっと孤立しているかなという子を見つけたら、明るく元気に、なにか言葉をかけてあげたい。その子もきっと前向きに変わるような気がするんですよね。 ーーーーーー 小島よしお 2001年から早稲田大学在学中の5人によるコントグループ「WAGE」のメンバーとして活躍。2006年にWAGEの活動が休止後、ピン芸人としての活動を開始。2007年5月には、自身のYouTube動画が週間再生ランキング世界5位になるなど、一躍注目を浴びる。早稲田大学卒業の高学歴を活かし、数多くのクイズ番組にも出演。抜群の運動神経を持ち合わせた彼は、その芸風やポジティブな人間性で近年では全国の子どもたちから絶大な支持を得るようになる。2020年5月には、コロナ自粛中の子どもたちのために算数を教える動画も話題となり、活動の幅をさらに広げている。