三菱重工・川重・IHI…「CO2有効活用」事業化へ、生かすそれぞれの強み
脱炭素社会に向けて期待が高まる二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留(CCUS)技術―。CO2の回収・貯留(CCS)に関する「CCS事業法」の成立など環境整備が進み、重工大手が事業化に動いている。三菱重工業は企業間連携を活用して地域に即したビジネスモデルを目指す。川崎重工業は大気中から直接CO2を回収する「DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)技術」を生かしたCCUS事業の構築を、IHIはCO2を活用するメタネーション技術の事業化を図る。(八家宏太) 【写真】三菱重工が米国の石炭火力発電所に設置したCO2回収プラント CCSはCO2を回収し、地下に閉じ込めて貯留する技術だ。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向けて重要な技術の一つとされている。矢野経済研究所(東京都中野区)によると、国内のCCUS技術によるCO2回収量は2040年度には5300万トンに達する見込みだ。 CCSを促進する上で制度整備が課題となっていたが、CCS事業法が5月に国会で可決された。同法では貯留層が存在する可能性がある区域を指定した上で事業者を認定し、試掘権や貯留権を与えるもので、法制化を通じて30年までの事業開始を目指している。 重工大手3社はそれぞれの技術的な強みを生かして実証試験や技術開発を進めている。
三菱重工 /関連技術・製品など開発
「(前中期経営計画の期間では)非常に多数の引き合いをいただいた。これは当初の計画をはるかに上回るものだった」―。三菱重工の泉沢清次社長はCCUS分野についてこう語る。 前中計期間では50件以上のCO2回収案件の引き合いや実現可能性調査(FS)への対応に加え、CO2回収装置や液化CO2輸送船などCCUSバリューチェーン構築に必要な技術・製品の開発を進めてきた。米エクソンモービルとの提携など、地域ごとに技術供与や企業間連携にも取り組んできた。 27年3月期までの3カ年の中計では、次世代CO2回収技術の開発で「さらに競争優位を確立していく」(泉沢社長)ほか、米国や英国で先行するプロジェクトで最終投資決定(FID)を目指す。これらの取り組みを通じて事業化の加速を図る方針だ。