インドは国産化?「新幹線輸出」はなぜ難航するのか ベトナムも「自国技術」で高速鉄道建設表明
■鉄道輸出は長期的視野で ベトナムの例を見ても、日本が協力したプレF/S(フィージビリティスタディ、実現可能性調査)の結果に基づいて2010年に新幹線方式による高速鉄道計画を閣議決定したものの、国会の承認を得られなかった。その後、要請を受けたJICA(国際協力機構)が高速鉄道建設計画策定の予備調査及び本調査を実施したという経緯がある。その報告書の冒頭には、「先の国会での審議に応え、今後の議論に耐えられるだけの充分な検討が必要である」とある。
しかし、その後もベトナム政府の決断は先送りされてきた。つまり、ベトナム側の理解を得ることができなかったわけである。 ある日本政府関係者は、2010年代初頭、政府による海外鉄道案件醸成への過熱ぶりは異常だったと語る。民間企業の体力やキャパシティーが顧みられることのないまま、官邸主導、結論ありきで先行してきた。そんな中で、はたして現地の実情やニーズがくみ取られていたかは言うまでもないことだ。 被供与国から「押しつけ」とも揶揄されているODA(政府開発援助)とセットにした鉄道システム、とくに新幹線輸出にかかわる制度設計の見直しは必須だ。ODAを通じて、日本企業が利潤を得ること自体に非はないだろうが、あまりにも短期的利益を追求するばかりに、今の状況がある。もっと長期的視野に立ち、日本と相手国、お互いのためになる援助こそ、本来のODAのあるべき姿ではないか。
高木 聡 :アジアン鉄道ライター