インドは国産化?「新幹線輸出」はなぜ難航するのか ベトナムも「自国技術」で高速鉄道建設表明
■高速鉄道「国産化」が持つ意味 すべてがインド側の責任なのか。いや、さかのぼればその原因は、新幹線輸出をあまりにも安易に考え、「日本の鉄道技術は世界一」と傲慢な態度で向かい合っていた日本政府にあるといえるのではないか。 インドネシアでは、ジャカルタ―バンドン高速鉄道が2024年10月18日に開業1周年を迎えた。事故やトラブルなく1年間を走り切り、9月にバンドン地方で比較的大きな地震が発生した際も自動検知システムで全列車が安全に停車し、インフラの損傷もなかった。年間利用者数は580万人に達し、平日でも乗車率は7割以上と利用も定着している。
高速鉄道プロジェクトを推進してきたジョコ・ウィドド前大統領は10年の任期を迎え、10月にプラブォウォ大統領率いる新政権にバトンタッチした。新政権はインフラ偏重型の投資から脱却するというのが大方の見方であるが、高速鉄道プロジェクトは引き継がれ、スラバヤまでの全線開業を目指すことが見込まれる。同時に国産車両の開発、製造を間に合わせる構えである。 日中で繰り広げられたインドネシア高速鉄道の受注争いで、一つの決め手となったのは技術移転の可否だ。
古くは日本とフランスで競り合った1990年代の韓国高速鉄道プロジェクトから、技術移転の可否は争点とされてきた。結局、移転を認めるフランスが勝ち、韓国はフランス譲りのTGV方式の高速鉄道を国産化した。現状で唯一、日本の新幹線輸出に成功したとされる台湾も、もし直前の地震が発生していなければ欧州連合が受注していただろう。 巨額の資金を必要とする高速鉄道プロジェクトは、一国の命運を左右するといっても過言ではない。建設費の返済や、運営費用をどう賄うのかなどの不安や批判は必ず議会や国民から噴出する。実際、高速鉄道単体ですぐに黒字化することは不可能だ。その中で、高速鉄道の国産化を約束することは国威高揚にも繋がり、議会や国民を納得させる材料になりうる。