インドは国産化?「新幹線輸出」はなぜ難航するのか ベトナムも「自国技術」で高速鉄道建設表明
これらヴァンデ・バーラトシリーズの車両は、広軌と呼ばれるインド在来線の1676mm軌間用であり、インドとしては将来的な海外展開のために、新幹線と同じ世界標準である1435mmの標準軌を高速で走れる技術を確立したいという思惑がある。2023年10月に一部区間が先行開業したデリーの通勤新線(RRTS、営業最高時速160km)は標準軌だが、車両はアルストムが現地生産した。 いきなり時速360kmに対応した車両をインド国内工場で製造することは不可能で、当初の国産化発言は、あくまでも価格引き下げの交渉材料、いわば「揺さぶり」と見られていた。
しかし、インド政府は本気だった。10月15日、BEML社はムンバイ―アーメダバード間向けの設計最高時速280kmの高速車両8両2編成を受注したと発表。2026年までの納入を見込む。現地報道によれば、E5系タイプ車両の調達に向けた交渉が難航し、具体的な導入スケジュールも見通せない中で今回の発注に至ったとし、インド政府は価格引き下げに努力しているとのことだ。 BEML製の高速車両1両あたりの単価はおよそ2億7900万ルピー(約5億1070万円)で、E5系タイプの4億6000万ルピー(約8億4200万円、いずれも開発費等を除いた純粋な車両価格)より大幅に安い。もっとも、E5系の導入を諦めたわけではなく、国産の中高速タイプ車両とE5系タイプの併存を検討している模様だ。
とはいえ、日本の関係者からすれば、寝耳に水、信じられない事態である。 このような完全インドベースの国産車両が導入されれば、信号や保安装置などの地上設備は設計のやり直しになる可能性があるし、はたして日系メーカーに対応できるのかという話になる。速度の異なる車両が入り乱れることになれば、運行計画も白紙に戻る。本当に2026年末までに調達が可能なのか、旅客営業に耐えうる車両なのかも未知数な中、開業への道は前途多難だ。