「やってしまう可能性は昔からあった」元日本代表MF乾貴士、引退も考えた激動の1年
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会が11月20日に開幕する。乾貴士は前回ロシア大会で2得点を挙げて、日本代表の16強入りに貢献した。鮮やかなゴールを記憶している人もきっと多いに違いない。あれから4年。今季はセレッソ大阪のエースナンバー8を背負っての活躍が期待されたが、規律違反を起こし、チームを退団。その後は清水エスパルスに移籍した。騒動の渦中で引退も真剣に考えた天才ドリブラーが丁寧に言葉を選びながら語った。(取材・文:金明昱/撮影:倉増崇史/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「まさかここまで大きなことになるんか」
「引退したほうがいいかなって思いました。チームとの話し合いでも何も進まなかったからなんもできひんし」 元日本代表MF乾貴士の頭の中に“引退”の2文字がよぎるほどの騒動は、4月5日の柏レイソル戦で起きた。 途中交代する際に“暴言”を吐き、試合後も不服の態度をとったことで、当時の所属クラブのセレッソ大阪から「チームの規律、秩序を乱す行動が確認された」という理由で公式戦6試合の出場停止処分。さらに全体練習への参加も禁じられた。 「暴言を吐いたと言われれば……。なんとも言いづらいんですけど、振り返ると伝え方のミスもあり、自分が下手でした。ただ、あの場面では(試合に)もっと出たかったし、まだいけたっていうのがありました」 ピッチ上で熱くなり、声を荒らげる選手は世界のどのリーグにもいる。ドイツやスペインで10年間プレーしてきた乾にとって、“自己主張”するのは当然の行動だったに違いない。実際、「海外では監督とも何度もぶつかっていましたし、そのたびに話し合いで解決してきました」と話す。 34歳の今も第一線でプレーできるのは、時には主張し、熱い気持ちがあるからだと思うが、「ただやっぱり、自分の起こした行動に対して不愉快な気持ちになる人はいるので、そこは反省しないといけない。それでもまさかここまで大きなことになるんかって……。でも後悔はしていないんです」と言う。 自分のポリシーを曲げてまでサッカーをするのは意味がない――。乾貴士とはそういう男だ。