「カズの息子」という呪縛の先へ。親の力をプラスに換えて、三浦孝太19歳の挑戦
大みそかに迫ったRIZIN.33の第一試合で、格闘家デビューする三浦孝太(19)。キングカズこと三浦知良・りさ子夫妻の次男として知られる。一挙手一投足すべてにどうしても「カズの息子」という色眼鏡もついて回るが、本人は至ってポジティブだ。師にも恵まれ、万全の準備で本番に臨む三浦。出自という「呪縛」に対峙しながら前を向きもがく、19歳の挑戦に密着した。(取材・文:栗原正夫/撮影:ヤナガワゴーッ!/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
大学に行くという選択は逃げにしか思えなかった
「RIZIN出場が決まったとき、お父さんは『しっかりアマチュアで経験を積んでから出ないとオマエのためにならない』と反対していました。僕もその通りだと思ったし、最初に話をもらったときは断ったんです。ただ、こんなチャンスはそうないですし、最後は自分自身で考えて挑戦しようと決めました」 練習中に見せる険しい表情とは一転、まだあどけなさの残る19歳の三浦孝太(BRAVE所属)は、格闘技デビュー戦となる大晦日の「RIZIN.33」(埼玉・さいたまスーパーアリーナ)に臨む心境を素直にそう話す。 実戦経験ナシの十代の格闘家の第一歩が、いきなり総合格闘技の最高峰イベントであるRIZINになったことは驚きだが、それも無理はない。三浦は、サッカー元日本代表FW三浦知良“キング・カズ”とタレントの設楽りさ子の次男で、本人の意向とは別に周りが放っておくはずもないのだろう。 中学までは父の背中を追うように、サッカーボールと向き合った。だが、格闘家を目指す原点もまた父にある。
「お父さんがよく『あしたのジョー』やマイク・タイソン、モハメド・アリのビデオやDVDを見ていたこともあって、小さい頃からボクシングが好きでした。高校はボクシング部があればボクシング部に入りたかったんですが、なくて……。ちょうどその頃にたまたま遊び感覚で行ったのが総合格闘技ジムで、レスリングとか柔術、打撃など何でもアリで型がないのに惹かれたというか、面白いなと思ったんです」 格闘家として生きていくと心を決めたのは、高校を卒業するにあたってだった。周囲は大学受験の準備を進めるなか、自分の将来やりたいことがはっきりと見えた。 「お父さんも高校中退しながらサッカーで成功していたし、とりあえず大学に行かなきゃという考えはまったくなくて。やりたいことが決まっていたし、思い出作りのために行っている暇はないというか。お父さんの生き様をずっと見てきたので、仮にジャンルが違ってもいつか自分もスターになりたいという気持ちは小さい頃からありましたし、大学に行くという選択は逃げにしか思えなかったんです」