利用者の体に合わない車いすや歩行器が多い日本 なぜスウェーデンのように快適な福祉用具を提供できない?
宮本礼子・長谷川佑子「日本とこんなに違うスウェーデンの高齢者医療・介護」
内科医の宮本礼子さんと、認知症専門看護師としてスウェーデンで働いている長谷川佑子さんが、日本とスウェーデンの高齢者医療・介護の現状を比べながら、超高齢社会の日本のあり方を考えます。 【図解】ペットボトルのふたはどう開けている? 開け方でわかるフレイルのサイン
大きな車いすでゆったり…オーストラリア
私は長年、高齢者医療に携わっていますが、2008年にオーストラリアの介護施設を見学した時、日本では見たこともないような大きな車いすに高齢者がゆったりと座り、テレビを見ている姿(写真1)に、「日本は豊かな国のはずなのに、どうしてこういう車いすがないのだろう?」と不思議に思いました。
また、座面付きの歩行器(写真2左)が使われており、日本の歩行器(写真2右)との違いに驚きました。
さらにベッドと車いすの間の移乗は、「リフト」(写真3)という機械を使うのが当たり前でした。
移送用車いすで一日を過ごす日本の高齢者
一方、多くの日本の病院や介護施設では、その当時も今も、歩くことができなくなった高齢者は、移送用の低価格の車いすに座って一日の大半を過ごしています。移送用なので快適さはなく、しかも高齢者の体格や身体機能に合っていないものが多いです。例えば、背が低い人はテーブルの下に顔があり、足は床に着きません。(写真4) また、自力で座れなくなった人には、背面が倒れるリクライニング車いすが必要ですが、これは値段が高いため、必要な数が不足していることが多いです。 日本では今もリフトはほとんど使われておらず、大抵、介護者1人の人力で移乗します。そのため、わが国の介護者には腰痛症が多いです。 スウェーデンもオーストラリアのように、高齢者は自分に合う車いすや歩行器を使用し、介護者はリフトを使うと聞きます。その様子を長谷川さんに聞いてみました。(宮本礼子 内科医)
快適な車いすや歩行器を県が無料で貸し出すスウェーデン
歩くことが不自由になった高齢者にとって、車いすは一日の大半を過ごすところで、人によっては食事中やくつろぐ時も座っています。そのため、車いすが快適でないと質の高い生活は送れません。 車いす、歩行器、リフトなどの補助器具は、県が運営する補助器具センターに注文します。センターには多くの種類が保管されているので、高齢者に合うものを必要な時に無料で借りられます。使用が終わればセンターに返します。