「No Means No」。女性が自分を守るために知っておきたい、3つのバウンダリーリストとは?
性のありかた(セクシュアリティ)やセックス・ポジティビティを守るために、自分なりの「境界線」を認識しておくことは重要。性科学やジェンダーに詳しいジャーナリストの此花わかが、女性が自分を守り、自律した人間として生きていくために必要な3種類の境界線について解説する。 【写真】「前回」心に染み込ませておきたい、セックス・ポジティビティについて。
「No Means No(ノーと言えばノー)」と「Yes Means Yes(イエスはイエス)」。
「No Means No」は性的な誘いに対して、"例え最初に同意をしていても、いつでもその同意を撤回し、Noと拒絶しできる"こと。フェミニズム運動において歴史的に使われてきた言葉だ。ただしこの「No Means No」という概念は、「ノー」と言えない状況にいる人々や「ノー」を言語ではなくボディランゲージを通して伝えている人々を守ることができない、という批判もある。確かに、相手との権力勾配、心理的状況、恐怖など様々な理由で人はノーと言えないときがあるだろう。 こういった背景もあり、近年、性的同意に関する表現は「Yes Means Yes(イエスはイエスを意味する)」というものに変化しつつある。これは「積極的なイエス(同意)」という意味で、気が乗らないイエス・しぶしぶ言うイエス・無理じいされたイエスに「性的同意はない」という意味だ。
この考え方は、2008年に出版された『Yes Means Yes!』(著:ジャクリーン・フリードマン、ジェシカ・ヴァレンティ)が広め、2017年にはスウェーデンが性行為にはこの「積極的なイエス(同意)」を必要とするという法律を定めた。 日本でも昨年2023年から「不同意性交罪」が行使されているが、日本ではこの「積極的な同意」に基づいた性的同意がきちんと理解されていないように思える。日本の性教育は不十分である上に、そもそも日本社会は上下関係が厳しく、他人に「ノー」と言えない文化があるからだ。 「出る釘は打たれる」「和を以て貴しと為す」などの言葉があるように日本では自己主張よりも、そもそも私たちは大抵のことに「イエス」と言っていないだろうか。