女性の自閉症が爆発的に増えている、なぜ? 男性と異なる傾向とは 米大規模調査
コミュ「能力の欠如」から「スタイルの違い」へ
自閉症は社会性コミュニケーション症に分類されるが、研究により、これらの困難はコミュニケーション「能力の欠如」というよりその「スタイルの違い」によることが、より明確に示されつつある。 「自閉症の人々は、共感能力や心の理論、つまり他者が何を考えているかを理解する能力に欠けているという固定観念があります」と、脳や神経の特性の違いを多様性ととらえて社会の中で活かそうとする「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」に特化した施設「トータル・スペクトラム・カウンセリング」の心理学者ジョエル・シュワルツ氏は言う。 2012年、英国の社会学者ダミアン・ミルトン氏が「二重共感問題」を提唱した。これは、コミュニケーションがうまくいかないのはそれぞれの経験が異なるからであり、世界を同じように体験する人同士の方が、うまく交流できる可能性が高いとするものだ。 確かに「自閉症の人たちを集めて何か作業をしてもらうと……彼らは非常にうまく協力し合い、お互いを非常によく理解し、非常に深く共感し合うようになります」とシュワルツ氏は言う。 この新たな理解は、診断における自閉症のあり方についての概念を広げ、またどのような支援が必要かについての知見を深めるのに役立ってきた。
核心的な特徴は「感覚の違い」
こうしたコミュニケーションのスタイルにおける違いは、自閉症の核心的な特徴である感覚的な差異から生じると考えられている。 われわれがどのように世界を経験するかは、騒音や痛みなどの刺激を脳がどのように処理し、解釈するかによって決まる。この事実は、自閉症の人々における、異常なほど高い痛みへの耐性や、音や光に極めて敏感であることに関連しているのかもしれない。 自閉症の人々は、情報の過剰なインプットに圧倒されやすく、思考が停止したり、感情のコントロールができなくなったりする。これが、体を揺らす、くるくる回る、頭を激しく振る、手をパタパタさせるといった、典型的な行動につながる。しかし研究によると、「自己刺激行動」と総称されるこうした反復行動は避けるべきものというよりも、感情の制御を助けるものだという。 「処理しなければならない情報が多すぎるのです」と、自閉症を専門とする心理学者のカリッサ・バーネット氏は言う。「自閉症の人は、情報の処理に少し時間がかかります。特に感情をコントロールする方法を教わっていない場合には、圧倒されてしまうこともあります」 こうした感覚的な差異があることは、見方を変えれば、自閉症の人々には世界に対する異なる視点が備わっているとも解釈できる。人が一度に処理できる感覚入力には限りがあるため、自閉症の人々は多くの場合、世界のより小さな断片を処理しているということになる。ただし、その解像度ははるかに高い。 「そうした経験の深さが、周囲のものと強くつながり、極度の喜びを感じ、物事を深い明晰さで見る能力につながるのです」とシュワルツ氏は言う。 自閉症の妻を持つシュワルツ氏は言う。「世界を妻の目を通して見ることを少しだけ知ることによって、わたしの経験の深さが増し、以前は見過ごしていただろう物事に、より大きな喜びを見出すようになりました。妻を通して、また妻が物事を受け止める方法を通してそれを体験できるのは、実にすばらしいことです」
文=Rachel Fairbank/訳=北村京子